りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

高慢と偏見

高慢と偏見 上 (ちくま文庫 お 42-1)

高慢と偏見 上 (ちくま文庫 お 42-1)

高慢と偏見 下 (ちくま文庫 お 42-2)

高慢と偏見 下 (ちくま文庫 お 42-2)

★★★★★

元気はつらつとした知性をもつエリザベス・ベネットは、大地主で美男子で頭脳抜群のダーシーと知り合うが、その高慢な態度に反感を抱き、やがて美貌の将校ウィッカムに惹かれ、ダーシーへの中傷を信じてしまう。ところが…。ベネット夫人やコリンズ牧師など永遠の喜劇的人物も登場して読者を大いに笑わせ、スリリングな展開で深い感動をよぶ英国恋愛小説の名作。オースティン文学の魅力を満喫できる明快な新訳でおくる。

昔読んだことがあって映画も見た記憶があるんだけど、ほとんど内容を覚えていなかったので再読。
読み始めて思い出した。そうだそうだ。堅いタイトルにだまされちゃいけなかったのだ。これは本当に楽しい恋の鞘当ての物語なのだ。

ベネット家は、娘たちをお金持ちの青年と結婚させることしか頭に無いミーハーのベネット夫人と、そんな夫人を馬鹿にしてからかうことを楽しみにしている皮肉屋なベネット氏、美人で善良で人の欠点を見ない長女ジェイン、知的で明るくて辛辣な次女エリザベス、器量が良くないのでひたすら勉学に励む3女メアリー、ミーハーで将校のお尻を追いかける(女でもお尻を追いかける?)4女キティと5女リディアの7人家族。

彼らの村にお金持ちでハンサムで優しくて感じのいいビングリー氏と、彼の親友でもっとお金持ちだけどツンケンしていて愛想がなくて感じの悪いダーシー氏がやってきて、年頃の娘を持つ母親たちは自分の娘が見初められないものか!といきりたつ。
この2人の青年と、ジェイン、エリザベスの恋愛模様を、エリザベスの視点から描いた物語。

結婚は家同士で行うもので、お金を持っていない男は少しでもお金持ちの女性と結婚するのが当たり前だったり、女性はひたすら男性からのプロポーズを待つしかなかったり、どんな立派な人物でも商人だと低く見られたり…この時代特有の背景はあるのだが、とにかく出てくる登場人物がみな生き生きとしていて楽しいので、「古くささ」を全く感じさせない。

ベネット家の人々の他に、ベネット氏の甥で牧師のへりくだり屋コリンズ氏(もうこの人のおぞましさが最高!)、エリザベスの親友で器量は良くないけど聡明なシャーロット(彼女の決断には驚かされた)。
コリンズ氏のパトロンともいうべき大地主キャサリン夫人。魅力的だけど胡散臭いウィッカム将校。
みな何かしら欠点があるのだが、面白がり屋のエリザベスの視点から描かれているので、なんだかおかしくて憎めない。

そして優しくて善良だけど優柔不断でダーシーの言いなりのビングリー氏と、高慢ちきな態度が鼻につくダーシー氏。
そんなダーシー氏に反感を抱き、身分の差も気にせず、ばしばしと口撃するエリザベスの気持ちのいいこと!
しかし人を見る目には自信のあったエリザベスが実は人を見誤ることもあり…。

人を見る目があるということは、偏見を持ちやすいということでもあるんだな。
自分は自分。分かってもらえないならそれはそれで仕方ない。というのは、高慢っていうことになるのだな。
長所は短所につながり、短所は魅力につながる。そんなことが読んでいるとじわじわと伝わってきて面白い。

自分の過ちに気付いた時、素直にそれを認め受け入れ成長していく、エリザベスとダーシーがとても素敵だ。
どんな時代であっても、人間が泣いたり笑ったり怒ったりする感情に違いはないし、その中で面白いことを見つけて笑って生きていくっていいなぁ。
そんな気持ちにさせられた。

きっと読むたびに印象が変わる小説だと思う。だからこうやって何年たっても読まれ続けているのだろう。
よし、これで次はゾンビにいけるぞ。