りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

カキフライが無いなら来なかった

カキフライが無いなら来なかった

カキフライが無いなら来なかった

★★★★

妄想文学の鬼才と、お笑いコンビ「ピース」の奇才が詠むセンチメンタル過剰で自意識異常な自由律俳句四百六十九句。散文二十七篇と著者二人の撮影による写真付き。

ピースのお笑いはあまり好みではない。お笑いはベタな方が好きなのでね。作り込まれたものとかストーリー性の高いお笑いは好きじゃないの。

でも又吉は好き。
以前何かの番組で又吉の本棚が映ったことがあって、「うわっ!この本棚の前で何時間も過ごしたい!又吉と友達になりたい!」と思ったのだ。>いや決して本目当てというわけではなく。それほど魅力的な本棚だったのだ。
ブログも時々覗いているのだが、この人の文章、好きだなぁと思う。言葉の選び方と哀愁とセンチメンタル加減が非常に好みなのだ。

で、最近「まさかジープで来るとは」という本が出たと知り、1作目の「カキフライが無いなら来なかった」を読んでみた。
私もこの間同じようなことがあって。
納豆チャーハンがどうしても食べたくて会社から少し離れた駅ビルにある炒飯屋さんに行ったら、納豆チャーハンが品切れで。「納豆チャーハンがないなら来なかったよ!」と店を出て行きたい気持ちをぐっとこらえて、あんかけ焼きそばを注文したのだ。

又吉とせきしろによる自由律俳句が交互におさめられているのだが、タイトルにあるような俳句の他に散文もあり、面白い。
散文の中では又吉がおかっぱにする話が良かったな…。

「あるなぁ…」と共感できるものから、ずきっと胸が痛むようなものから、「え?よくわかんない」と首をかしげるものまで。
そのバラバラ具合が心地良い。
センチメンタルと哀愁とお笑いのバランスもちょうど良い。
俳句とか詩とかって、妙に余白をとったり、こじゃれた擬音を使ったりするのが、生理的にダメなんだけど。そういう嫌らしさが皆無なところも良い。

私が特に好きだったのは。

せきしろ
人見知りを貫いた成果を見せる機会がない
大人になったらと未だ思う
自分だけ助かっている想像をまた

【又吉】
ほめられたことをもう一度できない
似顔絵を見ると嫌われていたことが解る
このままでは可決されてしまう

なんか結構深いところでの「あるある」で、うれしいような痛いような。
友達になりたいけど、きっともし知り合えても上手に友達になれないんだろうな。
妙に分かりあえて話が弾んだらそれはそれでいや〜な感じになりそうなところが、またよい。