りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

時の地図

時の地図 上 (ハヤカワ文庫 NV ハ 30-1)

時の地図 上 (ハヤカワ文庫 NV ハ 30-1)

時の地図 下 (ハヤカワ文庫 NV ハ 30-2)

時の地図 下 (ハヤカワ文庫 NV ハ 30-2)

★★★★★

1896年ロンドン。恋人を切り裂きジャックに惨殺され、大富豪の息子アンドリューは、失意の底にあった。彼は、西暦2000年へのタイムトラベル・ツアーを催す時間旅行社を訪ねた。時間をさかのぼり、切り裂きジャックから恋人を救おうというのだ。だが旅行社は過去には行けず、彼は小説『タイム・マシン』を発表したH・G・ウエルズの力を借りることに。一方、上流階級の娘クレアは、2000年へのタイムトラベルに参加するが……

これはもうめっちゃくちゃ面白かった。
すんごい好み。どこからどこまでも。
しかし、この面白さをどう伝えたらいいのか…。
上のあらすじを見ると、あたかも壮大なタイムトラベル物のようだけど、実はそうではないのだ。でもそうじゃないだけじゃないのだ。(←変な文章)

物語は3部構成になっている。
1話は恋人を切り裂きジャックに殺された金持ちのボンボンがタイムトラベルをして恋人を救おうとする話。
3話を通して登場するのがH.G.ウエルズ。言わずと知れた「タイムマシン」の作者である。
1話では彼の恵まれなかった幼少時代から紆余曲折を経て作家になるまでがしんみりと少し恨めしげにウエルズの視線で語られる。
エレファントマンにかごをもらうエピソードは良かったなぁ…。

2話では2000年へのタイムトラベルで出会った将軍に恋をするクレアというお金持ちのお嬢さんの話。
個人的にはこの2話はかなり好み。
1話よりもスピード感があって冒険活劇っぽくて読んでいてわくわくした。
ウエルズの人間くさいところもいい味出てるし、細部にユーモアがたっぷりちりばめられていて、思わず吹き出してしまった箇所もいくつか。コナンドイルに触れてるところがおかしかったなぁ。ってあれ?それは3話目だったか?(すでに記憶があいまい)

そして3話はいよいよウエルズが物語の中心に。
ここで物語は大きく展開して、えええ?そうなの?!と驚き、ああ、でもそうかそういえばあれもこれも伏線であったのかと腑に落ちて、かーっ!なんてこったい!!やられたーー!となるのだ。 不要に思える細部がこの3話にきて効いてくるのだ。

もうとにかくなんの先入観も持たずに、読んでほしいのだ。
そして驚いてほしい。やられてほしい。私のように。
好みが分かれる作品だとは思うけれど、SFが苦手な人でも「物語」が大好きな人ならきっと楽しめると思う。
ブラボーです。