馬を盗みに
- 作者: ペールペッテルソン,,西田英恵
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2010/12/16
- メディア: 単行本
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「ぼくら、馬を盗みに行くんだ」1948年、スウェーデンとの国境に近いノルウェーの小さな村で、父さんと過ごした15歳の夏…そこから50年余りを経た1999年の冬、人里離れた湖畔の家で一人暮らす「わたし」の脳裏に、消えた父との思い出が鮮明によみがえる。ノルウェーを代表する作家による、みずみずしくも苦い青春―老境の物語。40以上の言語に翻訳された世界的ベストセラー。
老境を迎えた男が人里離れた村で一人暮らしをしている。 男の脳裏によみがえるのは、父の思い出。少年だった彼が、父を見出しそして失うまでの出来事を回想しながら、今の自分を見つめなおす、という物語。
これがなかなかよかった。
父を今でも求める傷ついた子どもである自分と、自分の娘たちから逃げるようにして一人で暮らす自分。
子が親を思う気持ちというのはなんだか永遠の片思いのようだなぁ…とも感じられるし、親が子を思う気持ちはオモテに出てくる以上のものなのだなぁ、とも感じられる。
人間は基本的には孤独なんだなぁと認めざるをえないけれど、孤独を求めていてもそれでもやはり一人きりでは生きられない。
そしてある地点を境に人生は下り坂になっていくけれど、それでも人生は続くし、子ども時代の全てが失われるわけでもない。
決して明るい物語ではないけれど、淡々とした中にも希望のようなものも見えて、とてもよかった。