ブラックランズ
- 作者: ベリンダバウアー,Belinda Bauer,杉本葉子
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2010/10/06
- メディア: 文庫
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十二歳の少年スティーヴンは、今日も母の弟ビリーの遺体を捜してヒースの茂る荒野にシャベルを突き立てる。十九年前に起きた連続児童殺害事件以来、被害者の母となった祖母は心を閉ざし、母もまた鬱屈した感情を抑えることができない。傷の癒えない家族を変えるためには、ビリーの遺体を発見し、事件を完全に終わらせるしかないと考えたスティーヴンは、やがて殺人犯である獄中のエイヴリーと手紙のやりとりを開始する。猟奇的殺人犯と十二歳の少年の危険な往復書簡は、次第に二人を思わぬ方向に導く…。英ゴールドダガー賞にノミネートされた傑作スリラー登場。
スティーヴンの叔父ビリーが児童殺害犯に殺されて以来、祖母は心を閉ざし自分の殻に閉じこもってしまった。その娘であるスティーヴンの母も祖母からの愛情を十分に受けられず、その鬱憤を息子のスティーヴンにぶつけてしまう。
スティーヴンは祖母と母に笑顔が戻り、普通の家族になれることだけを夢見て、叔父ビリーの遺体を捜す毎日。遺体が戻れば祖母の時計もまた動き出すと信じて。
そしてそんなスティーヴンの一途な思いは、獄中にいる殺人犯エイヴリーと手紙をやりとりするということで、思わぬ展開を迎える…。
「失踪家族」を読んで、当分スリラーはごきゃんべん〜と思っていたのにもかかわらず、またこんな辛い小説を選んでしまった。
読み始めはそんなふうに思って腰が引けていたんだけど、読み進めるうちに、とにかくもうスティーヴンの健気さに胸を打たれて「おねがい、誰からスティーヴンの気持ちに気付いて」「誰か助けてあげて」と夢中になって読んでしまった。
辛いストーリーだけど、スティーヴンの心情が細やかに描かれているので、たんなるサイコスリラーとは違う味わいがあった。
大人も辛いけど、子どもも辛いのよ…。
外で過酷な目にあってくるのだから、せめて帰って来た時には温かいふかふかのタオルで包み込んであげるようにしよう…。ほんとにそう思ったよ。