りつこの読書と落語メモ

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ウィルバーフォース氏のヴィンテージワイン

ウィルバーフォース氏のヴィンテージ・ワイン (エクス・リブリス)

ウィルバーフォース氏のヴィンテージ・ワイン (エクス・リブリス)

★★★★★

『イエメンで鮭釣りを』に続くトーディの第二作! ボルドーワインの虜となった若き実業家の転落を、ユーモラスかつ苦味に満ちた語りで、四つの「ヴィンテージ(醸造年)」を遡りながら描き出す。

前作「イエメンで鮭釣りを」が面白かったので、二作目のこちらも読んでみた。

主人公のウィルバーフォースはワインにとりつかれた男。
酩酊状態で高級レストランに入り、貴重で高級なワイン・シャトーペトリュスを注文し、冴えない身なりを不審がられポケットから大量の札束を見せる。運ばれてきたペトリュスを口にし至福の時を味わうも、酩酊状態になり、ぶっ倒れこん睡状態に陥る。
古くからの友人である医師コリンが心配して駆けつけるが、彼を欺き、貯蔵しているワインをむさぼり飲む。
これはもう明らかに「アル中」以外のなにものでもないのだが、「自分は酒に溺れているのではなくワインに魅せられているだけだ」と嘯き、反省の色も見せず、ひたすらワインに溺れるウィルバーフォースを、最初は腹が立ったり、身につまされたりしながら見ていたのだが…。

物語は、主人公ウィルバーフォースがアル中で死にかけている「現在」から始まって、時系列に遡って4つの年代に分けて描かれる。
アル中で死にかけで妄想や幻覚でめためたになっている現在2006。
最愛の妻キャサリンを自分のアル中のために失う2004。
ワインの師、そして人生を狂わす…あるいは人生を見出すきっかけを作ったフランシスからワインごと彼の資産を買い取る2003。
フランシス、そして、キャサリンと出会う2002。

この構成が絶妙なのだ。
最初に最悪最低を見せられ、徐々に過去に遡るうちに、彼の人間的な欠陥や欠落や寂しさが明らかになっていって、もう最後(それが物語の始まりでもある)を読んだら、結末がわかっているだけに、ものすごく苦い気持ちになるのだ。 でも苦いだけじゃないのだ。
なんか「あーあ」って思わず笑ってしまうような、ちょっと明るい気持ちになれるのだ。不思議なことに。
そこがこの小説の一番の魅力だ。

こんな小説にはなかなかお目にかかれない。
こういう小説に出会いたくて、本を読んでいるのだ。
出会えてよかった。ブラボー。