りつこの読書と落語メモ

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パストラリア

パストラリア

パストラリア

★★★★★

資本主義社会の片隅で、人々は行き詰まり、捻れた現実に溺れていく―。テーマパークで洞窟人のカップルのふりをして生活する男女。ストリップ・バーでダンサーとして働きながら姉妹や叔母を養う男。自己啓発セミナーに触発され、厄介者の妹を家から追い出そうとする兄。逃げ場の無い人生の不条理を、辛辣なユーモアと桁違いの想像力で描き出す欧米で大絶賛の傑作短編集。

テーマパークで洞窟人のふりをして生活する男女。
それぞれに家庭を持ち、問題を抱え、とにかく生きるため生活していくために「職業」として洞窟人であろうと懸命に頑張っている。
しかしテーマパーク内でリストラが始まり、意識の低い者や「無益」と会社側に判断されたものが次々切られていく。 主人公の男は障害を持った子どもを抱えその治療費のため働き続けなければならない。
一緒に「洞窟人」をやっている女は、ヤク中の子どもがいて、こちらも切羽詰った状況なのだが、「職」に対して不真面目で、そのことを会社側に勘づかれていて、男の方にその判断が委ねられている。

友情をとるか、自分の生活をとるか。
彼のとった行動は正しかったのか否か。
自分だったらどうしたのか。

SF的とも言える異常なシチュエーションなのだが、主人公の置かれている状態や苦悩は「やめてくれ」と叫びたくなるほどリアルで真に迫っていて、読んでいてとても辛い。
しかし目をそらすことはできない。
なぜなら「彼」は、物語の中の架空の人物ではなく、まさに自分そのものだから。
私はどうすればいいのか。それは正しいのか誤りなのか。それを目の前に突きつけられて、目をそらすことはできないのだ。

収められいてる5つの短編。どれもとにかく辛くてとにかく面白い。
ありえないシチュエーションなのにぞっとするくらいリアル。 悲惨としかいいようがないのだが、やけにおかしい。
正しくなくてもいい。とにかく生きろ。そんなメッセージが伝わってくる。ブラボー。