りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

バレエ・メカニック

バレエ・メカニック (想像力の文学)

バレエ・メカニック (想像力の文学)

★★★★

造形家である木根原の娘・理沙は、9年前に海辺で溺れて以来、昏睡状態にあった。「五番めは?」―都心での商談後、幻聴らしき言葉を耳にした木根原は、奥多摩の自宅へと帰る途中、渋滞の高速道路で津波に襲われる。担当医師の龍神によれば、昏睡中の理沙の夢想が東京に異常事態を引き起こしているというのだが…稀代の幻視者があまりにも精緻に構築した機械じかけの幻想、全3章。

暴力的な描写に最初なかなかなじめず、「これは無理かも…」と腰がひけつつ読んでいたのだが、1章の後半ぐらいからぐぐっと引きつけられた。 2章は1章と打って変わって読みやすい文章とウェットな物語で、思い切り感情移入しながら夢中になって読んだ。 そして3章でまた激しく突き放され、「うぉっ…」とあっけにとられちょっと置いてけぼりを食ったような気持ちも残しつつ、しかしなにかとてつもない凄いものを見せてもらった、という満足感とともに読み終えた。

ドSFは苦手だし、情より知に傾いている小説はなかなか理解できないのだが、それでもなんか凄いものを見せてもらったヨロコビがあって、面白かった。