りつこの読書と落語メモ

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堕ちてゆく男

墜ちてゆく男

墜ちてゆく男

★★★★★

2001年9月11日、世界貿易センタービルは崩壊する。窓外には落ちる人影。凍りつく時間。狂乱と混沌。愛人をつくり、ポーカーに明け暮れ、何かから逃走するように生きてきたエリート・ビジネスマン、キースはその壮絶なカタストロフを生き延びる。妻と息子の元に帰った彼は新しい生へと踏み出すかに見えたが―。現代アメリカ文学を代表する作家が初めて「あの日」とその後を描く。全米の注視を浴びながら刊行され、大きな話題を呼んだ「あの日」への返歌、新たなる代表作。

感情や説明を極力排したようなぶっきらぼうな文章と断片的なシーンの連続のような構成に、なかなかなじむことができず、読むのに苦労した。 そういえば前にも挫折したことがあったのだ、ドンデリーロ。苦手なタイプの作家なんだな。
それでもこれは面白かった。好みではないけれど、これがすごい小説だということは私にもわかった。

宗教を持たない人間にあの事件を理解することはできないと思っていたけれど、持っていたら余計に理解できないのだ、ということにこの本を読んで気付かされた。

空を監視する子どもたち。
その日について語り続ける老人たち。
あの日あの場所にいたことだけで結びつく男と女。

考えても考えても答えはでない。忘れたくても忘れられない。
落ちる男のパフォーマンスにぞっとさせられるように、あの光景が思わぬときに浮かんできて足元をすくわれる。
9.11に人生を粉々にされてしまった人たちがいったいどれくらいいるのだろう…。

最終章の加害者と被害者が混じりあうところは心底恐ろしかった。