りつこの読書と落語メモ

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神を見た犬

神を見た犬 (光文社古典新訳文庫)

神を見た犬 (光文社古典新訳文庫)

★★★★★

とつぜん出現した謎の犬におびえる人々を描く表題作。老いたる山賊の首領が手下にも見放され、たった一人で戦いを挑む「護送大隊襲撃」…。モノトーンの哀切きわまりない幻想と恐怖が横溢する、孤高の美の世界22篇。

そんなつもりはなかったんだけど、ブッツァーティを2冊連続読んでしまった。
そんなつもりじゃなくてどんなつもりだったんだ?って言うと、なんかちょっと古典的なものを読みたい気分だなぁと思って自分のメモの前の方に書いてあった古典的なものをピックアップしたつもりだったんだな。
タタール人の砂漠」を読み終わって、「じゃ、つぎはこれ」と読み始めて、「ほぉ。なんか感じが似ているなぁ」と思い、後ろについてる作者年表を見て、「うおっ。これも同じ人の書いた本だった!」と気付いたという、おまぬけぶり…。とほほ。

タタール人の砂漠」もとても良かったんだけど、短編もいいね!
解説を読んだら短編で賞もとっていると。さらに絵も素晴らしいのだと。
凄い人だったんだなぁ…。いつか絵も見てみたい…。

22編の短編は、神話的な物語、幻想的な物語、SF、と多岐に渡るのだが、私は神々の話が面白かった。
信仰に対する下地が私たちとは違うんだろうと思うけれど、信じる気持ちと信じない気持ちの揺れがなんとも言えず絶妙。そこまで書いても大丈夫なの?と少し心配になりつつも、でも皮肉な視点を持ちつつも圧倒的な善きもの(それが神?)を信じているんだろうな、という感じが伝わってくる。そしてそれは信仰の有無を問わず、私たちはみな持っているものなんじゃないかなと思う。だからこそ、こうして多くの人に読まれ共感されるのではないだろうか。

病院を皮肉った作品も秀逸だ。
この人、よっぽど病院で酷い目にあったのかな?と思いながらも、わかるわかる、あるある!で、思わずぷぷっと吹き出しながら読んだ。
皮肉だなぁと思いながらも、黒いユーモアじゃなくて白いユーモアなんだな、この人は。
すごく好きだ。他の作品も読んでいこうと思う。