りつこの読書と落語メモ

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古書の来歴

古書の来歴

古書の来歴

★★★★★

100年ものあいだ行方が知れなかった稀覯本サラエボ・ハガダー」が発見された――
連絡を受けた古書鑑定家のハンナは、すぐさまサラエボに向かった。
ハガダーは、ユダヤ教の「過越しの祭り」で使われるヘブライ語で祈りや詩篇が書かれた書である。
今回発見されたサラエボ・ハガダーは、実在する最古のハガダーとも言われており、
500年前、中世スペインで作られたと伝えられていた。
また、ハガダーとしてはめずらしく、美しく彩色された細密画が多数描かれていることでも知られていた。
それが1894年に存在を確認されたのを最後に紛争で行方知れずになっていたのだ。
鑑定を行ったハンナは、羊皮紙のあいだに蝶の羽の欠片が挟まっていることに気づく。
それを皮切りに、ハガダーは封印していた歴史をひも解きはじめ・・・・。

面白かった!
ハンナが「サラエボ・ハガター」の修復を行いながら、この本がたどってきた歴史を解析していくところは、ミステリー小説を読んでいるようにわくわく。
そして本を慈しむように大切に修理していくシーンは愛情と敬意にあふれていて、読んでいてとても幸せな気持ちになれる。

ハンナの物語とその時代の人たちの生き様を交互に描くというこのスタイルが読んでいてたまらなく楽しい。
ハンナたちは本に関わった人たちのことをワインの染みや猫の毛、塩などから、想像するしかないけれど、読んでいる私たちはちゃんとした物語として知ることができるという幸せ…。

ハガターと関わった人たちの壮絶な生き様がとてもドラマティックだ。
胸が苦しくなるような悲劇的な物語が多いけれど、彼らの逞しさやしたたかさは、読んでいる私たちに力を与えてくえる。

戦争や迫害に翻弄された名も無き人たちの人生が古書の修復作業によって蘇ってくるというつくりがとても素敵だった。
いい本を読んだなぁ…。小説っていいなぁ。