りつこの読書と落語メモ

はてなダイアリーからブログに移行しました。

ミスター・ピップ

ミスター・ピップ (EXLIBRIS)

ミスター・ピップ (EXLIBRIS)

★★★★★

ブーゲンヴィル島の13歳の少女マティルダは、白人の「先生」ワッツの教えで、孤児のピップが活躍するディケンズの小説『大いなる遺産』の世界に魅せられる。しかし、独立抗争の影が島に忍び寄り、思いもかけない惨劇が…。「物語の力」を謳いあげた、胸に響く傑作長編。英連邦作家賞受賞作。

過酷な現実に立ち向かうためには想像力が何よりの栄養で、だけどそうやって一生懸命はぐくんできたものが暴力によって破壊される。

マティルダの経験したことはあまりにも残酷で目を背けたくなるのだけれど、ミスターワッツとおかあさんがまいた種は彼女の中できちんと実を結び再生の力になっている。
特に私は、後半でマティルダが島に来る前のミスターワッツのことを調べて、現実を知る部分がとても好きだった。

ミスターワッツもマティルダのおかあさんも決して特別な素晴らしい人間なわけではない。
でも極限状態に置かれたとき、どちらかを選択しなければならないとき、「こちら側」を選んだ。それがその人の根底にある善良さなのかもしれないし、「こうありたい」姿なのかもしれない。
そういう全てをきちんと理解して受け止めて前に進んでいくマティルダがすごく素敵だった。

物語の力や想像力の尊さを感じさせてくれた小説。良かった。