りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

抱擁

抱擁

抱擁

★★★★★

二・二六事件から間もない、昭和12年の東京。前田侯爵邸の小間使として働くことになった18歳の「わたし」は、5歳の令嬢・緑子の異変に気づく―。歴史の放つ熱と虚構の作り出す謎が濃密に融け合う、至高の物語。

翻訳本好きの私だけど、日本の小説をもっと読みたい!という気持ちにさせてくれる作品だった。 ストーリーの凄さではなく、文章の美しさや巧みさで、ぞわぞわと不安な気持ちになったり、ほっとしたり、ぞくっとなったり…こういう体験は翻訳本では難しいのかもしれない。

一番怖いのは、起こったことよりも、自分で自分を信じられなくなること。 最後の一文にぞくっとなった。

挿絵も素敵で何度も読み返したくなるような作品。