りつこの読書と落語メモ

はてなダイアリーからブログに移行しました。

歌の翼に

歌の翼に(未来の文学)

歌の翼に(未来の文学)

★★★★★

歌をうたうことによって肉体から精神を解き放つこと、それが「飛翔」である。宗教と経済に支配され食料危機が慢性化した近未来アメリカにおいて禁止されている「飛翔」の魅力にとりつかれた少年ダニエルは、ある日突然アイオワの有力者の策略により刑務所へ、そこから彼の数奇な流転の人生がはじまる。やがて結婚、妻のボウアは「飛翔」したまま帰らぬ人となり、抜け殻となった妻とともにニューヨークへ向かう。オペラ劇場で働きはじめたダニエルは、人気歌手のレイと出会い、恥辱と快楽にまみれた生活をおくりながら歌手を目指し、ついに成功を手に入れるのだが…SFのみならずゲイ小説、教養小説、音楽小説などのあらゆる要素を投入しながら、支配する者とされる者の宿命、芸術の喜びと悲惨をエモーショナルに描く、奇才ディッシュの半自伝的長篇にして最高傑作がついに復刊。

いやもうすごい小説だわ、これは。さすが国書刊行会ブラボー。

読んでいて、パワーズの「われらが歌う時」を思い出した。
全然違う種類の小説だけど、「歌」という手段を使って別の次元へ翔んでいくこと、そしてそれによって家族が離散し、また修復していくことを描いたというところに、共通点を感じたのだ。

SFをベースにしながら主人公の成長を丁寧に描いているから、そのSFチックな要素も「当たり前」に受け入れられる。
簡単に共感できるようなストーリーではないのに、根本にはとても普遍的なものがあるから、???となりながらも、ページをめくることを止められないし、自分とは共通点が全くないダニエルに感情移入して読むことができたんだろうなぁ。

ラストは、多分こうなるような気がしていたので、激しく納得。
100%理解できたとは思わないけれど、こういう小説が大好きだ。出会えてよかった。