りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

小川洋子の偏愛短篇箱

小川洋子の偏愛短篇箱

小川洋子の偏愛短篇箱

★★★★★

片手に顕微鏡、片手に望遠鏡を携え、短篇という名の王国を旅するのに等しい…。内田百間から吉田知子まで、「奇」「幻」「凄」「彗」のこだわりで選んだ短篇16作品を収録。各作品ごとに小川洋子の解説エッセイ付き。

これは本当に素晴らしい!
他人の宝箱をこっそりゆっくり見せてもらえる幸せ。それもさ、「これしばらく持ってていいよ。中身も見ていいから」とちゃんと許可をもらって!

収められている中で私が好きでよく読む作家は向田邦子宮本輝ぐらい。あとはふだん私が避けて通ってきた作家が多い。
日本の作家もこんな作品を書けるんだ?!と、自分の無知を棚に上げて大喜びしちゃった。
どの作品も、ねじくれていて壊れ気味で不完全だけど完成されていて、その按配が絶妙だ。この按配が小川さんの好みなんだろうなと思うと、それらの作品が余計に愛おしい。

特に好きだった作品。

川端康成「花ある写真」
うわ、このねじれ方と壊れ方といやらしさはなんなんだ…。川端康成って本当にいやらしい人だったんだなぁ…。
川端康成は私の中で好んで読みたくない作家ベスト10に入るんだけど、でもこれはちょっと他の作品も読んでみたほうがいいのかも…。
そしてこの作品についての小川さんの解説エッセイがきちんとこの小説の味わいを継承しているところに、にやり。二倍おいしい。

金井美恵子「兎」
なんじゃこりゃー。なになに、金井美恵子(ってこういう作品を書く人だったの?知らなかったーー。 これは奇想好きな私にはたまらない作品だった。おもしろい!

森茉莉「二人の天使」
この作家は以前からもしかすると好きかも、でももしかすると私には全然良さがわからないかもと避けてきた作家。
なんとなく私はあんまり触っちゃいけないような世界に思えるんだけど、小川さんの後ろからこそこそと覗かせてもらって、今度はこっそり一人で来てみよう、とひそかに誓った。

宮本輝力道山の弟」
一時期よく読んだ宮本輝
この作品も前に読んだことがあるような気がする。
なんかすごく日本的で昭和って感じがする作品だ。いかにも宮本輝っぽい。
こういうたくましさと荒々しさとしたたかさ、嫌いじゃない。
主人公の少年がとても愛おしくて、彼に向ける小川さんの視線が実にやさしい。

吉田知子「お供え」
この中で一番度肝を抜かれたのがこの作品だ。これ、すごい。まさかこんな展開になるとは、思ってもみなかった。びっくりだ。読み終わって思わず「おもしろい!!」と声が出てしまった(←迷惑です)。
他の作品もぜひぜひ読んでみたい。
これが一番最後に収められているところに、にやけてしまう。

これ、他の作家や翻訳家でもやってほしいなぁ。
桜庭一樹とか古屋美登里の偏愛短編を読んでみたい。
あと、私にもやらせてほしい。わははは。