りつこの読書と落語メモ

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極北で

極北で (新潮クレスト・ブックス)

極北で (新潮クレスト・ブックス)

★★★★

1616年夏、北極海イングランド捕鯨船が帰国の途に着こうとしていた。トマス・ケイヴという名の寡黙な男を一人残して―。明けない夜。うなりをあげる吹雪。闇を染めるオーロラ。雪と氷に閉ざされた極限状態のなか、ケイヴは、日々のできごとを克明に記し、生きるために獣を狩り、思い出深いヴァイオリンをアザラシたちにむけて奏でる。ケイヴはなぜ、極北の地に残ったのか。底知れない哀しみを抱えた男の越冬と魂の救済を重ねあわせた、胸をゆすぶる物語。英国人女性作家が400年前の航海日誌と豊かなイマジネーションで紡ぎだした、壮大なスケールのデビュー長篇。

人間が足を踏み入れてはいけなかったのではないかと畏怖を抱かずにはいられないような極北の地に1人残った男がいた。 それがトマス・ケイヴという船乗りの男だった。
1年生き延びることができたらケイヴの勝ち。そんな賭けをして、他の乗組員たちを乗せた船は島を去る。
果たしてケイヴは1年後も生きていられるのか。いったいどんな過酷な生活がケイヴを待ち受けているのか。そしてケイヴはなぜそんな無謀な賭けに出てしまったのか。

ドラマティックな設定だけど、物語はどこまでも静かで美しい。
一見無謀で自暴自棄に見えるケイヴだけれど、極限状態の中、自らの知性と理性を研ぎ澄まさせて生きようとする姿にはものすごい生命力を感じずにはいられない。

ケイヴの視点からだけでなく、彼と出会い彼に魅了された少年トマスの視点からも描かれていたのが、とても良かったと思う。