りつこの読書と落語メモ

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夏の庭

夏の庭―The Friends (新潮文庫)

夏の庭―The Friends (新潮文庫)

★★★★★

これはとても素敵な物語だった。
小学6年生の男の子3人が抱く死への恐れ、子どもであることの無力感、そして友だちや親やまわりの人と対峙することで成長していく様が、とても生き生きと描かれていて、読み終わって「ああ、いい本に出会えてよかったなぁ」としみじみ思った。

小学6年生の夏に、ぼくと山下と河辺の3人は、人が死ぬところをこの目で確かめたいという好奇心から、町外れに1人で住むおじいさんの見張りを始める。
見張られていることに気付いたおじいさんは憤慨するのだが、いつしか彼らと心を通わせるようになり、死んだように生きていたおじいさんは生を取り戻し、少年たちはおじいさんからいろいろなことを学び、4人の間に友情が芽生えていく。

死に向かう者と、成長の真っ只中にあり生命が最も輝いている者。
お互いを知り関わりをもつことで、老人は生きることの喜びを思い出し、少年たちは老いていくことや死ぬことを身を持って学ぶ。

少年たちを見つめるおじいさんの優しいまなざし。
おじいさんを思いやる少年たちの不器用なやさしさ。
もうそれらがたまらなくて、読んでいて、涙が止まらなかった。

そして自分自身も、自分の祖父が亡くなった時、いろいろな想いを抱いたことを思い出した。
今まで怒ったり笑ったり不機嫌になったりおどけたりしていたおじいちゃんが「からっぽ」になってしまった寂しさもあったけれど、私がその時に感じたのは、霊とかそういうの私は今まで信じてこなかったけれど、でも確かにおじいちゃんの思いとか魂はどこかにちゃんと残っているな、ということだった。
そして自分より小さいいとこたちの姿を見て、「順番」というのをはっきりと意識した。
生命には始まりがあって終わりがあること。老いたものは若いものに道を譲っていくものだということ。
なんかそんなことを、祖父が亡くなった時にストンと理解した。

そういう気持ちを思い出させてくれる小説だった。
若い人たちや小さい人たちに、ぜひ読んでもらいたい、とおもった。