りつこの読書と落語メモ

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博物館の裏庭で

博物館の裏庭で (新潮クレスト・ブックス)

博物館の裏庭で (新潮クレスト・ブックス)

★★★★★

1952年、英国の古都ヨークの平凡な家庭に生まれたルビー・レノックス。一家はペットショップを営み、お店の2階に暮らしている。部屋の片隅に眠る、古ぼけた写真、ピンク色のボタン、兎の脚のお守り。そんな小さなものたちが、それぞれの時代の記憶を語り始める―。はかない初恋や、家族とのいざこざ、異国への憧れ。そして、ルビーの母の、祖母の、曾祖母たちの平穏な日々を突然奪っていった、2度の戦争。ルビーの人生を主旋律とする物語は、さかのぼる三代の女たちの人生と響き合いながら、一族の壮大な歴史を奏でる。ウィットブレッド賞を受賞した、現代の「偉大なる英国小説」。

3世代にわたる家族の年代記、と聞けば読まないわけにはいかない。
表紙といい、タイトルといい、いかにも私好みそう!
と読み始めたんだけど、これが想像していたのとはかなりテイストが違った小説であった。

全然ハートウォーミングじゃないの!
むしろかなり悲惨っていうか悲劇的なことががしがし起こって、親も子どもを愛せなかったり、夫婦が憎みあっていたり、しかも戦争にもあっていて愛する兄が死んだり婚約者が死んだりと、かなり過酷。
それでも明るくてユーモアたっぷりな語り口なので、読んでいてそんなに暗い気持ちにはならないの。
だけどヘヴィだから読むのに結構時間がかかっちゃった。

主人公のルヴィーが受胎したところから物語は始まる。
扱いにくいけれど両親に溺愛されている姉ジリアン。頭がよくてクールな姉パトリシア。夢見がちで今の生活に不満を抱いている母バンティに、人間のクズのような父ジョージ。
彼らを見るルヴィーの視線は残酷なほど冷静で、姉ジリアンの死も「え?」とあっけにとられるくらい、あっけらかんとユーモラスに語られる。

そしてルヴィーの「いま」をはさむように、母バンティ、祖母ネル、そしてネルの母アリスの物語も語られる。 今はただの「おばあさん」「おばさん」になってしまっている祖母も母も、幸せになろうと生き生きとじたばたしながら生きていることが、このパートを読むとわかる。
そうすると、ルヴィーの視点からとは又違った視点でバンティやネルのことが見えるようになってくる。
ここらへんの見せ方がとてもうまい。

はさまれた物語には幾つかの謎がちりばめれているのだが、それが最後まで読むと明かされていて、ちょっとミステリー的な楽しさもある。
いろんな要素がぎゅうぎゅうに詰まっていて、ばらばらのようでいて1つの絵になっていて、まさに博物館のような(それもちょっとインチキくさい)面白い小説だった!