りつこの読書と落語メモ

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白の闇

白の闇 新装版

白の闇 新装版

★★★★★

ヘヴィな小説だった…。
タイトルと表紙から、幻想的なファンタジーを想像していた私は、頭をがつんとやられて、なかなか立ち直れなかった。

ある男が、突然失明した。それは原因不明のまま次々と周囲に伝染していった。事態を重く見た政府は、感染患者を隔離しはじめる。介助者のいない収容所のなかで人々は秩序を失い、やがて汚辱の世界にまみれていく。しかし、そこにはたったひとりだけ目が見える女性が紛れ込んでいた……。
極限に追い詰められた人間の弱さと魂の力を圧倒的な筆力で描いた現代寓話。2008年映画化で世界的に再び注目されている。

ある日突然目が見えなくなったら…と考えたことはないだろうか。
私はしょっちゅうある。
なぜなら目が見えなくなることが私は一番恐ろしいからだ。

これはある日突然目が見えなくなる、目の前が白い闇に包まれるという病気に冒された人たちの物語だ。
最初に病気なった人、彼の車で家まで送りその車を盗んだ人、彼の妻、彼を診た眼医者、その病院の看護婦、そこにいた他の患者…と次々感染していき、事態を重く見た政府は患者たちを打ち捨てられた精神病院に隔離する。
これ以上感染者が増えないように、軍隊が彼らを監視するが、感染者は増える一方で、病院内は患者であふれかえり汚物があふれ、そこは生き地獄と化していく。

尊厳が奪われた時、人間はどうなってしまうのか。
どこからが人間でどこからが動物なのか。
生きる意味とはなんなのか。
作者はこれでもかこれでもかと過酷な状況を突きつけてくる。

ものすごく過酷で残酷でものすごくリアルだ。
明日こういうことが起こっても不思議ではないと思わせる。その時自分はどうなってしまうのか。生き残ることができるのか。そこまでして生きる価値を見いだせるのか。
それまで自分が正しいと思ってきたこと、正義、倫理、価値感がこなごなになったら…私はどうなってしまうんだろう。世界はどうなってしまうんだろう。

あまりに酷くて目をそらしたくなりながらも目をそらすことができない、そんな小説だった。
ものすごく醜悪なものと、ものすごく美しいものを、同時に見せられたような気がする。