りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

血液と石鹸

血液と石鹸 (ハヤカワepiブック・プラネット)

血液と石鹸 (ハヤカワepiブック・プラネット)

★★★★

牢獄で一人、何語かさえ不明な言語の解読に励む男の姿を描く「囚人と辞書」。逮捕された偽英語教師の数奇な半生が明らかになる「“!”」。不気味でエロティックな幽霊とのホテルでの遭遇を物語る「もはや我らとともにない人々」。アパートの隣人が夜中に叫び続ける奇怪な台詞の正体に迫る「自殺か他殺か?」など、ブラックユーモアとアイロニーに満ちた37篇を収録。名高い詩人であり小説家としても活躍する著者が贈る異色の短篇集。

独特の乾いたユーモアと毒があって、なんかこういう作家をほかには知らない。
作者はアメリカに亡命したベトナム人らしいんだけど、ベトナムに対して結構自虐的だったりとても皮肉な視線を持っていて、それがとても面白かった。

囚人が牢屋の中で何語かさえもわからない辞書をひたすら解読していく「囚人と辞書」と、偽英語教師の独特な英語取得法を描いた「"!"」が面白い。
なんかこの人は言語を学ぶということに関して独特のとらえ方をする人だ。

「一文物語集」「ただいま上映中」は、その状態で見せちゃうんだ?と驚いたり、いやでもこういう作品がこの人の真骨頂なのかも?と思ったり。
「ただいま上映中」は、さまざまな映画についての説明と評価(★マーク)がついているんだけど、「郵便配達は二度ベルを鳴らす」の説明には思わず吹きだしてしまった。知っている映画の説明を見たところから判断すると…おそらくここに書かれた「血液と石鹸」は嘘っぽい。でも妙に見てみたい…。もしかするとそんな映画自体存在してないのかもしれないけど。

これを読んでも作者がどんな人なのか全然見えてこないんだけど…他の作品はどうなんだろう。気になる。
こういうユーモアって、作者自身も面白がってげらげら笑いながら書いてるんだろうなって人と、本人はにやりともしない無表情でいるんだろうなって人がいると思うんだけど、リン・ディンはきっと後者なんじゃないかな、と思う。