りつこの読書と落語メモ

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マタニティドラゴン

マタニティドラゴン

マタニティドラゴン

★★★★★

あーーこれすごく好きだーー。とっても好みだ、この作家。出会えて良かった!
日本の作家にものすごく疎いのでこの人のことも全然知らなかったんだけど、太宰治賞を受賞している作家なんだね。っていうか、太宰治賞なんてものがあったんだね。それすら知らなかった…。
で、私が最近知って大好きになった津村記久子もこの太宰治賞をとっているんだね。ってことはもしかすると私好みの作品が多かったりするのだろうか…。気になる。

最近見つけたとても好みの合う(と勝手に思っている)ブログにこの本の感想が書かれていて、ぜひ読んでみようと思ったのだ。なによりタイトルに惹かれた。マタニティドラゴン。

甘い、記憶。「新しい龍を彫りました」すべてはそこから、始まったのかもしれない。明日の延長線上に未来があるとは限らない。だから―。第21回太宰治賞作家による、恋愛以上の物語。運命に断ち切られた恋を描く短篇小説「ことり心中」同時収録。

中篇が2つ収められている。
1作目が「ことり心中」。失恋したらしい女性がひたすら歩くところから始まる。歩きながら彼女は思い出す。失恋の相手クツシタのことを。
素のままの自分を受け入れてもらえること、そして甘えること。それを40代にして知ってしまって、それがあまりにも幸せだったから、突然それらを失って、彼女は体がすかすかになってしまったと感じる。

なぜ突然連絡がとれなくなってしまったのか。クツシタの心の中に何が起きたのか。その理由を知ったとき、彼女は気付く。クツシタのことをほとんど知らなかったということを。
悲しみ怒りからっぽになってしまってひたすら歩くことしかできなくなってしまった彼女が立ち止まるシーンがとても好きだ。そして再生していくことを暗示するラストシーンもとてもいい。

2作目が「マタニティドラゴン」。
主人公トモミはタウン誌の記者をやっている女性。
ある日、この街に彫師をやっている女性がいるということを耳にしてインタビューに出かける。
そこで出会った彫師の彫芋は、彼女が持っていた女彫師のイメージ(極道、凄み、美人)を裏切るようなぼんやりした女性で、ろくな記事も書けず企画そのものは流れてしまう。しかし彫芋がインタビューの間に見せた竜への深くて激しい愛に心惹かれ、その後頻繁にアトリエを訪れる。

トモミの失恋と(歓迎しない)妊娠、それに竜(ドラゴン)がまじりあって、なんとも不思議な空気感のある物語だ。
トモミと彫芋とのつかず離れずの距離感もなんだかとてもいい。

自分のまわりをちょろちょろしていたドラゴンの正体がわかるシーンがとても好きだ。なんか胸がちくっとなって泣いてしまった。
妊娠ってなんか「ほんわか幸せ」みたいに言われることが多いけど、暴力的な気持ちの悪さみたいのもちょっとあるんだよね。それをすごく上手に表現していたと思う。