りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

ラストオーダー

ラストオーダー

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★★★★★

うあああ。すごいよかった、これ。読む前からこれは絶対いいだろう!と思っていたけど、想像していた通り良かった。 グレアムスウィフトは以前「ウォーターランド」を読んで、これもすごく良かったので、この作品はあらすじをちらっと見た時から絶対いいだろうと思ってはいたんだ。

現代イギリス文学界の旗手が描く過ぎた日々の記憶と、現在が行きかう濃密な作品世界―’96年度ブッカー賞受賞作。亡き友の最後の願いを叶えるため、四人の男は海へ向かう。挫かれた夢、嫉妬や裏切り、そして美しい思い出…とむらいのドライブが進むにつれ明らかになる、それぞれの人生と関係。

肉屋だったジャックがガンで急死し、自分が死んだらその灰をマーゲイトの桟橋から海にほうってくれと言い残す。 ジャックの妻のエイミーは自分では行きたくないと言い、ジャックの友人であるレイに、自分の代わりに行ってきてくれないかと頼む。
レイはジャックとの共通の友人であるレイニーとヴィックと、ジャックの息子ヴィンスに声をかけ、4人でマーゲイトへ向うという物語だ。

章が細かく分かれ、それぞれの登場人物の視点から語られていく。
物語は過去にさかのぼり、そこには意外な事実があったり、親子の確執があったり、戦争があったり、友情があったり、挫折があったり、憎しみがあったり、愛情があったりする。
もうね。老人たちが今まで歩いてきた道とか、それぞれが背負ってきたものとか、失ってきたものとか…そういうのがしみじみと胸に迫ってきて、なんともいえないんだ…。
そしてときどき、はっとするようなフレーズに出会う。

なんだかきょうのことが、ジャックのイキな計らいのような気がしてる。わたしたちに、自分たちは特別あんdなと感じさせるための、わたしたちを喜ばせるためのイキな計らい

生きていあいだは違いがある。人は区別をつける。
(中略)
だが死んだ者は死んだものだ。わたしは死んだ者たちを観察してきたが、彼らは平等だ。

この小説には誰かを見送る時に私たちが感じるしんとした空気が張りつめていて、自分も大事な誰かを見送ったような気持にさせられる。
しかしそこにあるのは絶望じゃなく希望だ。
しみじみといい作品だった。