りつこの読書と落語メモ

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夏から夏へ

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日本代表リレーチーム、メダルへの熱き挑戦!
『一瞬の風になれ』で本屋大賞を受賞した著者が、昨年の世界陸上から北京オリンピックまでを日本代表チームに取材し、世界に挑む日本のトップアスリートたちの熱き闘いを描いたノンフィクション。

佐藤多佳子が日本代表リレーチームに取材して書いたノンフィクションと聞けば、いやがおうにも期待が高まる。
これがもうほんとに期待に違わずというか、期待以上に素晴らしいノンフィクションであったよ…。

出てくる選手がとにかく素晴らしい。そしてとにかく佐藤さんの選手に向きあう姿がもうなんていうかとっても素晴らしいんだ…。
例えばテレビでアスリートにインタビューするような番組を見ているときでもそうだけど、インタビュアーが選手のことを全然調べていなかったり、競技や選手に対して敬意を払っていないことが伝わってくると、ものすごく嫌な気持ちになる。選手に失礼だろう!と思うし、他の人がインタビュアーだったらもっと面白い話が聞き出せたのではないか、と思ったりする。

そういう意味で、佐藤多佳子さんはほんとに最高のインタビュアーだ。
選手たちのことを心底リスペクトしていて、競技についても興味を持って勉強していて、そして練習している姿やインタビューを受ける姿からその内面や魅力を的確に表現してくれる。
かといって、自分がいい気持ちになって陶酔して書いているのでない。どこまでも客観的に自分の解釈や思い込みは排除して書いていこうという、ストイックさを感じる。
もうね。読んでいてほんとに気持ちがいいの…。

それにもましてね。とにかく出てくる選手たちの魅力的なことといったら…。
特に心の残ったのは、末續選手の言葉だ。

スプリンターとしての自分の武器は?という質問に末續はこう答えた。
「人よりも強く不安を感じられることですかね」
(中略)
「人よりも悩めたりできるから。その悩みが、結局、克服材料になるし。」

これを読んだ時はなんかぞわぞわぞわ〜と鳥肌が立った。
昔、日本の選手は本番に弱いとよく言われていた。でも最近の選手はなんか違うなぁっていうのは感じていた。
世界陸上やオリンピックの大舞台で緊張しないはずがない。プレッシャーを感じていないはずがない。だけど今の選手は、それ以上に楽しんでいるように見える。なんかメンタルが強くなったのかなぁ、すごいなぁ…。自分もそういう強さとか自信がほしいなぁといつも羨ましい気持ちで見ていた。

だけどそうか。不安を感じていないとか、鋼のように強いというわけではないのか。
むしろ人より不安を感じたり悩んだりしているから、だからこその強さというのもあるのか。
多分レベルが全然違うんだと思う。彼の感じる不安は私なんかが感じる不安の比ではない。そしてそれを克服するための努力は私が今までしたことのないくらいの努力なんだと思う。
なんかね…。泣けたよ、ほんとに…。

フィクションはノンフィクションにかなわないのかもしれないなぁ。
読み終わってそんなことを思った。