変愛小説集
- 作者: 岸本佐知子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/05/07
- メディア: 単行本
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岸本佐知子、最新翻訳集 岸本佐知子が訳す世界の「愛」の物語。ブッカー賞作家から無名作家まで「変愛」と呼ぶしかない狂おしくも美しい愛の世界。こんな小説見たことない・・・!?
さすが岸本佐知子さんの選ぶ恋愛小説は変だわ…ってことで「変愛小説集」なんだな。
アリ・スミスの「五月」はどこかで読んだことがあるんだよなぁ。何か他のアンソロジーに収められていたんじゃないかな。
ひたむきに木に恋してしまう彼女も、そんな彼女を見つめる恋人も、なんとも切なくて優しい。奇天烈だけど純粋で優しさがにじんでいて…これは究極のラブストーリーなんじゃないかな。
皮膚がどんどん宇宙服に変化していって最後は体が勝手に浮かび上がって宇宙に飛び立っていってしまうという奇病にかかる「僕らが天王星に着くころ」(レイ・ヴクサヴィッチ)。これも強烈な話だけど、どうにか彼女を引きとめようと考えるこの男性の努力がなんともいじらしくてかわいらしい。
楽観的であれこれアイデアを述べる彼に対して腹立ちも感じていたんだけど、最後まで読んでなんかなんとも愛おしくなってきた。これ、いいな。
ジュリア・スラヴィン「まる呑み」も面白かった。
人妻が芝刈りに来たかわいい男の子をまる呑みして体内で同棲?するという話。なんともエロティックでグロテスクなんだけど、でもなんかヒステリックに笑いたくなるようなユーモアがあって好きだったな、これ。
ジェームズ・ソルター「最後の夜」はなんか最後まで読んで「お前、それはないだろう」と言いたくなる作品。描かれている3人誰から見ても「それはないだろう」なのがちょっとおかしい。
スコット・スナイダー「ブルー・ヨーデル」もよかったなぁ。自分を捨てた恋人を求めて飛行船を車で追い続ける男。蝋人形館、滝下り専門のライフセーバー、突如増え続ける飛行船。摩訶不思議なんだけどありそうで、自分も一歩間違えばこんな風に自分を捨てた恋人を一生追いかけ続けてしまうような気持ちにさせられるのだ。
ジュディ・バドニッツ「母たちの島」も結構好きだった。グロテスクな物語なんだけど、ぎりぎりのところで切なくもあるっていうか…。好きだな、この人の作品。
岸本さんがあとがきに書いていたけど、変な恋愛小説ばかり集めてみたけど、結果的にはものすごい純愛小説集になってしまった、って。ほんとにそうだと思う。良かった。