りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

楽園への道

楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)

楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)

★★★★★

ゴーギャンとその祖母をテーマにした巨匠の待望の大作を本邦初紹介。画家ゴーギャンとその祖母で革命家のフローラ・トリスタン。飽くことなくユートピアを求めつづけた二人の激動の生涯を、異なる時空をみごとにつなぎながら壮大な物語として展開。
「スカートをはいた煽動者」フローラ・トリスタン、「芸術の殉教者」ポール・ゴーギャンーー祖母と孫がたどった自由への道ーー

フローラ・トリスタン、「花と悲しみ」という美しい名をもつ一人の女性。彼女は、女性の独立が夢のまた夢だった19世紀半ばのヨーロッパで、結婚制度に疑問をもち、夫の手から逃れて自由を追い求めた。そしてやがて、虐げられた女性と労働者の連帯を求める闘いに、その短い生涯を捧げることとなる。ポール・ゴーギャン。彼もまた、自身の画のためにブルジョワの生活を捨て、ヨーロッパ的なるものを捨てて、芸術の再生を夢見つつ波瀾の生涯をたどる。貧困、孤独、病など、不運な風が吹き荒ぶ逆境の中、それぞれのユートピアの実現を信じて生き抜いた二人の偉大な先駆者を、リョサは力強い筆致で描ききる。

うおー。面白かったー!ものすごく骨太な作品なので、読むのにかなりの体力を消耗したけれど、頭の中に強烈な色彩と印象を残してくれて、読み終わった今は満足感でいっぱいだ。
ゴーギャンと、フローラという女性の物語は、1章ずつ交互に語られていく。最初はこのフローラという女性が何者なのか、この同時に語られていく2つの物語の関係もわからなかった。しかし2人の人生がシンクロしていき、徐々に2人の関係が明らかになってくるのである。

ゴーギャンとフローラは実際に会ったこともなく2人は全く別々の道を歩んだように見える。
しかし、その強烈な攻撃性や純粋さ、2人ともまだ見ぬ楽園を目指して精力的に動き続けたところ、人の倍のスピードでその人生を駆け抜けたところなど、共通点が多い。
どこまでが事実に基づいていてどこからがフィクションなのかわからないけれど、精力的に動き回る2人の人物の破滅的で精力的な生き様に、圧倒され翻弄され飲み込まれながら、夢中になって読んだ。

これを読んだら、むしょうにゴーギャンの絵を見たくなってきた。
そして今までその存在すら知らなかった革命家フローラについて、もっと知りたくなった。