りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

ツ、イ、ラ、ク

ツ、イ、ラ、ク (角川文庫)

ツ、イ、ラ、ク (角川文庫)

★★★★★

「こんな小説だろうな」と想像していたのとは全く違う小説だった。
タイトルと表紙から勝手に「大人の女の恋愛短編集」と思い込んでいたんだよね。でもってタイトルが「ツ、イ、ラ、ク」だから多分恋に落ちる話だろう、それも結構色っぺー話だろうと…。

森本隼子、14歳。地方の小さな町で彼に出逢った。ただ、出逢っただけだった。雨の日の、小さな事件が起きるまでは。渾身の思いを込めて恋の極みを描ききった、最強の恋愛文学。

いきなり小学2年生から始まってまずびっくり。ええ?大人の恋愛の話じゃないの?なんだ、これは?しかもやたらと登場人物が多くてわやわやしている。そしてなんだろうこのぐちゃぐちゃねちゃねちゃした感じは。うわ、だめかも。こりゃ読めないかも。そう思いながら読みすすめていたら、どっかーん…。えええ?いきなりそうきたか。出てくる女の子たちの中でこの森本隼子が一番好きだったんだけど。うへぇー。
いやあのね。もうすぐ中学生になるムスメを持つハハとしてはものすごい生々しいっていうか、ぞぞぞっとくるというか、衝撃がでかいのだ…。

だけどそこから俄然面白くなってきた。気がついたらもう夢中になって読んでいた。

そしてなんだろう、この小説は。妙に乾いてるようでいて、ねちゃねちゃしているようでもあり、汚れているようでもあり、ものすごく美しくもあり、ついていけないようで、ものすごく深いところで理解できるようでもあり…。
最初のころに「好きじゃないかも」と思ったのと同じぐらい、いやその10倍ぐらい好きだ。大好きだ。いや、まいったな、こりゃ。

中学生の時に早熟だったからといって、そのまま早熟な大人になるわけではないのだ。子どもの頃の恋が未成熟で大人になってからの恋が本物というわけでもないのだ。ヤケドのような恋だったとしても一生引きずってしまうことだってあるのだ。間違いが間違いじゃなかったってことだってあるのだ。
いやもうとにかく自分のいろんなところを白日のもとにさらされるような、痛いところをぐりぐりされるような、それでいてなんだか妙にすがすがしくて気持ちのいい小説であった。これ、かなり好きかも。