倒立する塔の殺人
- 作者: 皆川博子
- 出版社/メーカー: 理論社
- 発売日: 2007/11
- メディア: 単行本
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うおー。面白かったー!
皆川博子は「死の泉」しか読んだことがないんだけど、スケールの大きさやストーリーの緻密さや文章の美しさ、何をとっても素晴らしかったのでとても気になっている作家だ。
戦時下のミッションスクールで少女たちに何が起こったのか? 少女が図書館で見つけた一冊のノート。表紙をめくると美しい蔓薔薇文字の「倒立する塔の殺人」というタイトルだけがあった。ここに小説を回し書きしていこうと決めた少女は…。閉鎖的、禁欲的な生活での少女たちの想いは微妙にねじれていく。濃密で緊張感ある学園ミステリー。
図書館の本の中にまぎれてひっそりと置かれていたノート「倒立する塔の殺人」。このノートに小説を回し書きする少女たちの物語と、この小説の中で描かれる小説「倒立する塔の殺人」が交じり合って展開していく物語。
太平洋戦争から戦後という時代の中で、想像力だけを頼りに生きている少女たち。彼女たちの美醜や貧富がそのまま彼女たちの幸福・不幸につながっている。それは少女だけでなく100年前に少女だった私にも嫌になるほど覚えのある感覚だ。時に優しく時に残酷な少女たちはぞっとするほど排他的だ。しかしその残酷さと毒がたまらなく美しい。
そして物語の語り手となるイブが実に現実的でさっぱりしていて真っ直ぐな少女なので、この小説をとても気持ちのいい後味のいいものにしている。このあたりのバランスがものすごくいい。ものすごく好み。
ああ。いい小説を読んだなー。満足。