りつこの読書と落語メモ

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アラーの神にもいわれはない―ある西アフリカ少年兵の物語

アラーの神にもいわれはない―ある西アフリカ少年兵の物語

アラーの神にもいわれはない―ある西アフリカ少年兵の物語

★★★★★

冷戦後アフリカの最悪の紛争、リベリアシエラレオネ両国の内戦の惨劇、チャイルドソルジャーの生きる痛ましい現実を、闘うグリオが破格の文体をもって告発する。2000年ルノドー賞、高校生のゴンクール受賞作。

10歳か12歳(自分で自分の年がわからないのだ)の少年ビライマは、早くに父を亡くし、身体に障害を抱える母もその後失い、叔母マーンをたよって部族戦争の渦中にあったリベリアに渡る。家族もその日食べる飯も寝る場所もないビライマには、少年兵になる道しか残されていない。「腐った共和国」の国境を越えながら、政権側についたり、ゲリラ側についたりしながら、彼は生きていく。人を殺しながら。そして仲間を殺されながら…。

あっけにとられるほどの悲惨さだ。それを独特の語り口でユーモラスに辛辣にまるで寓話のように語っていくビライマ。彼の前にあるのは絶望と死しかないのだが、しかし生まれてからそれしか知らないから、罵りながらもどこかあっけらかんとした明るさすら感じさせる。

訳者による解説を読んで改めて、自分が何も知らなかったこと、この物語を半分も理解できていなかったことを知った。
ビライマが繰り返し語ったこと。そして決して語らなかったこと。この物語が書かれたいきさつ。その背景。圧倒的な物語と事実の前に、ただ呆然と立ち尽くしている…今はそんな感じだ。

「アラーの神さまだってこの世のことすべてに公平でいらっしゃるいわれはない」
ぼくのとんちき話の完全決定版タイトルは、こんなだよ。さあ、それじゃあ一発、ほら話をおっぱじめるとしようかな。