りつこの読書と落語メモ

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ガラスの宮殿

ガラスの宮殿 (新潮クレスト・ブックス)

ガラスの宮殿 (新潮クレスト・ブックス)

★★★★★

悠然たる語り、意外すぎる結末。世界的名声を誇る作家の代表作、ついに邦訳。
ビルマ最後の王都陥落――英軍が侵攻する古都の混乱のなか、幼き孤児と侍女は偶然出会った。そして、彼らの生と交錯するインド人エリート官僚の美しき妻。世界屈指のストーリーテラーが魔法のように紡ぎだす運命の恋のゆくえ、遍在する死の悲劇と20世紀の激動。全英50万部突破、各賞受賞の世界的ベストセラー、日本上陸。

出たときから気になっていた新潮クレストの新刊。

家族を失い孤児になったインド人の少年ラージクマールがインドを出てビルママンダレーにたどりつく。船員として働いていたラージクマールはその地に長くとどまるつもりはなかったのだが、イギリス軍が侵略してきて国を出ることができなくなる。「神」に近い存在であったビルマの王族たちは宮殿を民衆に襲われ、イギリス軍に国を追われる。宮殿に盗みに入った時にラージクマールは1人の美しい少女に出会う。それが孤児で侍女として王女に仕える少女ドリーだった。
彼女のことが忘れられないラージクマールはその後、材木の仕事で富を得て、彼女との再会を夢見て、国を追われた王室のもとをたずねていく。
別々の道を歩いていた2人の道が交差した時、ビルマという国も大きく変わっていく…。

3世代にわたる人々が恋をしたり新しい命が生まれたり悲劇に見舞われて死んでいったりする姿が、国の状態やそれぞれの立場の人たちの思いや苦悩とともに、生き生きと描かれている。時に実在の人物も登場するので、これがフィクションではなく実際にあった出来事なのではないか、モデルとなった人がいたのではないかという錯覚に陥る。
愛も幸せも富も、つかんだと思うとそれは悲劇への一歩を踏み出しただけだったりする。それでも、理解しきれていなかったとしても、正しい道を歩いたわけではなかったとしても、生きている。決してたんなる犠牲者ではない。自分の人生を選び取っている。

すごい小説を読んだなぁ。いやこれはもう驚異の物語というか一大サーガというか大河ドラマというか。とにかくそこらに転がっている小さい小説が吹き飛ぶような力のある小説であった。