りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

独白するユニバーサル横メルカトル

独白するユニバーサル横メルカトル

独白するユニバーサル横メルカトル

★★★

凝視せよ。ここにあるのは宝石だ。生理的嫌悪と、終わることのない暴力の果てに、名状しがたい感動が待っている、異形の物語たち。日本推理作家協会賞を受賞した表題作を含め8編を収録した短編集。

こんな小説を書く日本人の作家がいるんだ!とまずはびっくりした。グロテスク、不条理、残酷、インモラル。だけど不思議と汚らしくはなくて研ぎ澄まされた美しさのようなものさえある。感情的に寄り添えるような作品は一つもなかったけれど、ある種の爽快感があるような作品も中にはある。たとえば「無垢の祈り」は、読んでいて「もうそうするしかないんだ!」と自分でもちょっと嫌になるぐらい「やってしまえ!」な気持ちになってしまったし、「卵男」もある意味気持ちがいいと言えなくもない。

日本の作家も結構面白いなぁと思った。でもこれの前に読んでいたのが「残酷な童話」で、もうちょっとお腹いっぱい…。そしてやはり何一つ共感できない、心に響いてこないような小説は進んで読みたいとは思わない。私はもういいかな、この人は。