残酷な童話
- 作者: チャールズボウモント
- 出版社/メーカー: 論創社
- 発売日: 2007/10
- メディア: 単行本
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チャールズ・ボウモントによる珠玉の異色短編をご堪能あれ。アイデアとテクニックの奇抜さが面白い、ダーク・ファンタジー、ブラック・ユーモア短編のほか、発表当時問題になった「変態者」など18編を収録。
題名と表紙に惹かれて読んでみた。論創社のダークファンタジーコレクションとして刊行されている。ということでカテゴリーでいうとダークファンタジーになるのだな。こういう世界がダークファンタジーなのであれば、結構好きかもしれない。
今まで読んだ中では、例えば「失われた探険家」とか「棄ててきた女」とか「壜の中の手記」とか、それらの短編集と似た雰囲気。ホラー色の濃い作品もあれば、ブラックなユーモアに満ちた作品もあり、今でも十分面白い作品もあれば、ちょっと「ほえ?」と首を傾げてしまうような作品もある。1957年の作品だからちょっと「古い」と感じてしまう作品があってもしょうがないか。でも私は「壜の中の手記」よりこちらの方が全然面白かった。
表題作の「残酷な童話」。これは怖い。よくある話だけど、淡々と描かれているだけにものすごく怖い。うわっと驚くというより、ぞわぞわぞわ〜っと怖くなる感じ。これはうまい。
ユーモラスな「消えゆくアメリカ人」もいい。徐々に自分を失っていって気がついたら誰からも見えなくなっていた、なんて。なんかそういうことも起こり得るような気がして、ぞくっ。自分が消えていっているみたいだと薄々気がつきながらも職場にだけは通って給料はもらわなければ、と考えてしまう主人公が切ない…。身につまされるのう…。このラストも好きだ。絵が浮かんできて。
「子守唄」。これは確かにどこかで読んだことがあるんだけど、何かのアンソロジーに入っていたんだろうか。短くて単純な話だけどぞわぞわくる怖さがあって、この作者はうまいぞーという感じがひたひたしてくる。
「ただの土」「ダークミュージック」「お得意先」なんかも、奇想とか異色短編とかでよく見かけるような話ではあるけれど、淡々とした中に人間の物悲しさがにじんでいて、味わい深い。見せ方が上手な作家だなぁって感じがした。