りつこの読書と落語メモ

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ベルリン1933

ベルリン1933

ベルリン1933

★★★★★

1933年ヒトラー首相になる。そして人々は、歓喜と失望に、引き裂かれていった。ベルリン―、この街は二十世紀のすべてを物語る。チューリッヒ児童文学賞、オランダ児童文学賞など数多くの賞に輝く、ドイツYA文学の巨星コルドンの大河小説。

転換期三部作の2作目。原題は「壁を背にして」。2作目だけれど日本ではこの2作目から翻訳・出版されている。日本人になじみの薄い第一次世界大戦後のベルリンを描いた1作目を先に出版してもきっと売れないという判断があったんだろう。でもこれは年代どおりに読むべきなんじゃないだろうか。そうじゃなかったら、ナチスの台頭という出来事がなぜ起きてしまったのか、いったいどういう人たちが支持していたのか、渦中にいる人たちはどんな状態だったのか、よくわからないと思う。

1作目では「ハンスぼうや」と呼ばれていた赤ちゃんが2作目の主人公だ。栄養失調で死に掛けていたあの赤ちゃんがこんなに気持ちの優しい青年になって…と読み始めてすぐに目がうるうる…。そして1作目ではあんなにも子どもだったヘレがこんなにも深みのある頼りがいのある男になって…。そしてちゃっかり屋でかわいかった妹のマルタが…。

ナチス時代の物語はフィクション、ノンフィクションあわせても、かなりたくさん読んでいる。読むたびにその残酷さに鳥肌が立つ。あまりの酷さに悪い冗談のように思えてしまう。いったいどういう人たちがこんな政権を支持したのか、ドイツの人たちはどういう気持ちでいたのか。それまでの時代があまりにも貧しくて苦しくてつらかったから、集団ヒステリーにかかってしまったのだろうか。それとも「そんなのはおかしい!」と思う人たちもたくさんいたけれど、そんな声をあげることもできなかったのだろうか。

「本泥棒」を読んだ時、「ああ、ドイツの人たちも怖かったのだな…」と思った。この「ベルリン1933」を読むと、ヒトラーが政権をとるまでは、それを冗談にして笑い飛ばす人もいれば、「まさかナチスが政権をとるはずがない」と思っていた人たちもたくさんいたようだ。しかしそれは冗談でもなんでもなく、本当に想像している以上に酷いことが行われていくのだ。
それがわかっているから、読むのがとてもつらかった…。逆にこれがノンフィクションではなくフィクションであるということに希望を抱いて読んでいた。現実はそうではなかったとわかっているけれど、この本に出ている人たちは救われますように…。そんな気持ち。

不況、失業、貧困が続くと、なりふり構わず自分たちだけ幸せになれればいいという流れになってしまうものなのか。今の日本でもそういう風潮がないわけではないと思う。とても怖いと思った。