りつこの読書と落語メモ

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きみがくれたぼくの星空

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血栓で身体の自由を奪われたトンマーゾは、収容された老人ホームで、知性あふれる女性エレナに出会う。人生の終着点で初めて知った、真実の恋が奇跡を生んだ。メランコリックでユーモラスな、究極のシルバー恋愛小説。

誰の感想を読んでチェックしたのかもう覚えていないのだけれど、いつからか読みたい本リストにあったので読んでみた。
「究極のシルバー恋愛小説」なんていう安っぽい言葉でこの小説を紹介しないで欲しい。訳者があとがきで「(この本を読んで)泣かなかったら人間じゃない」なんて書いているけど、こんなのも勘弁してほしい。これはちょっと前にやたらと売れていたアホなお涙ちょうだい小説と間違われてしまうじゃないか。

かつては優秀な物理学者であったトンマーゾが脳血栓で倒れ老人ホームに収容される。若い頃からシニカルだったトンマーゾは老人ホームに入って「おじいちゃん」と呼ばれたり赤ちゃん扱いされることに怒りを感じているが、周りの老人を面白がってみるようなユーモアも持っている。そんな彼がホームの中でエレナという女性と出会って心を通わせる。

半身不随になって、何もかもが自由にならないことへの苛立ち、生き延びてしまったことの苦しさ、老いていくことの残酷さ。身体は不自由になってしまって思考が揺らぎがちになってしまったとはいえ、感じる心もプライドも失われてしまったわけじゃない。トンマーゾの嘆きはいつかは私自身の嘆きになるのだろう。
そうなった時に、皮肉と辛辣な言葉で武装して何も感じず何も期待せずあきらめて残りの人生を生きていくしかないのか。もう何かを学んだり前進したりすることはできないのか。

いやそんなことはない。恋をすることだってできる。愛を知ることもできる。変わることもできる。最後に豊かな人生を生きることもできる。この小説はそう語っている。
人前で読まなくて良かった…とほっとするくらい、私はこの本を読んで泣いた。だけど「これ泣ける本だよ〜」と言って紹介したくないのだ。泣けて笑えて考えさせられて、でも苦いだけじゃない…稀有な小説なのだ。