りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

悪魔の薔薇

悪魔の薔薇 (奇想コレクション)

悪魔の薔薇 (奇想コレクション)

★★★★

出たら必ず読むことにしている奇想コレクション。これのおかげで好きになった作家がたくさんいる。シオドア・スタージョンテリー・ビッスンゼナ・ヘンダースン。特に好んでSFを読むことのない私でも読めるSFがあるということを認識したのも、奇想コレクションのおかげかも。そういう意味では、今回のタニス・リーにも期待していたのだ。

耽美華麗にして陰惨沈鬱、退廃的で不道徳で官能的な幻想怪奇の饗宴――<現代のシェへラザード姫>の異名を誇るファンタジー界の女王・リーが語る、怪しく美しい9つの物語。世界幻想文学賞受賞作を含む、収録作全篇初訳!

フィクションは好きだけど、あまりにも現実的でない世界観にはついていけなくなる。だからべたべたのSFやファンタジーが苦手なのだ。この作品の中でも、特に書き出しの部分で目がうつろになってしまう作品が正直いくつか…。情景の描写があまりにも耽美的すぎて?1ページほど読んでから、文章が全く頭に入ってないことに気がついて慌ててまた最初に戻って読み直して。それでもどの作品にも引き込まれ、最後は「ほぉ〜…」とため息をついた。

特に私が面白いと思ったのは表題作の「悪魔の薔薇」。生粋のリーファンからしたら物足りない作品なのかもしれないけど、私にはちょうどよかったかなー。ファンタジーというよりは毒が効いてるっていう感じが好きだった。
3人の芸術家が死神と遭遇する「彼女は三(死の女神)」もすごく好き。詩人のアルマンが橋の下で幽霊のような女を見つけるシーンはぞくっとくるほど怖くて美しい。そしてこのラスト…ねっとり怖いよ〜。
恋をした女が魔女になって、その想いを隠すがために別の男に恋しているふりをしたばかりに悲劇がうまれる「魔女のふたりの恋人」。これも面白かった。魔女になっても自分の心をコントロールすることはできないんだなぁ…。

ああ、そうか。私は多分、私たちが暮らしているのと同じ日常がベースにあって、そこに紛れ込む魔法、毒、幽霊というスタイルが好きなんだな。それは魔女かもしれないけれど、もしかしたら自分自身の投影かもしれない、という曖昧さが好きなんだ。だけど最初から魔女がいて魔王がいて心優しき娘が魚になってそれを救う若者がいて…となるとちょっと私のラインを超えてしまうんだな。なんとなく自分のファンタジー受け入れラインがはっきりしたような気がする。