りつこの読書と落語メモ

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アレクサンドリア四重奏

アレクサンドリア四重奏 1 ジュスティーヌ

アレクサンドリア四重奏 1 ジュスティーヌ

アレクサンドリア四重奏 2 バルタザール

アレクサンドリア四重奏 2 バルタザール

アレクサンドリア四重奏 3 マウントオリーブ

アレクサンドリア四重奏 3 マウントオリーブ

アレクサンドリア四重奏 4 クレア

アレクサンドリア四重奏 4 クレア

★★★★★

この小説を読む前にいくつかの感想をちら見した。そこで私が得た情報。

  • 1巻はメロドラマっぽくてぴんとこないらしい。
  • でもここで見切ってはいけない。2巻から面白くなるのだ。そして4巻まで読んで初めて全てがわかるのだ。
  • できれば1巻から4巻まで間をおかずに読んだ方がいい。

いやこれはほんとに有益な情報(アドバイス)だった。まだ読んでいなくてこれから読もうかと思っている人に、私はこのことばをそっくりそのままおくりたい。

三島由紀夫をして「20世紀最高傑作の一つであり、優にプルーストトーマス・マンに匹敵する」と言わしめた歴史的大作が、名訳をさらに磨き上げた全面改訳で遂に刊行。

1巻では、「ぼく」(名前は明かされない)が島で幼い子どもと2人で暮らしながら過去を振り返る手記という形で物語が語られる。「ぼく」はアレクサンドリアで娼婦メリッサと恋愛関係にあったのだが、エキゾチックで刺激的なジュスティーヌと不倫関係になる。ジュスティーヌの夫で大富豪のネッシム、謎の多い男バルタザール、「ぼく」の同居人で外交官のポンバル、絵描きのクレア、皮肉な作家パースウォーデン…さまざまな人物が登場するのだが、「ぼく」の視点から語られるので、時系列もばらばらだし、人物の説明もない場合もあるし、何か大きな事件が起こったようなのだが「ぼく」には何のことだかわからないから読者もよくわからない。
このもやもやと自分の恋愛について語る感傷的で大げさな表現に「なんだかなぁ…」という気持ちになってくる。こんな調子で4巻まであるんだったらちょっと読むのがつらいかも…と思っては、「いやしかしここで見切ってはいけないのだ」と自分に言い聞かせながら読みすすんでいくと、1巻後半ぐらいからだんだん面白くなってくるのだ。

そして2巻。こんどは1巻で「ぼく」によって語られた出来事を、バルタザールが語り出すのだ。「きみの手記(1巻)を読んだが、あれは真実から遠く離れている」と言って。いやもうここからが面白い面白い。同じ物語が語り手が変わるとこうも変わるのか。1巻でもやもやしていた霧が晴れていく気持ちよさ。しかしこれが真実だったのだろうか?とちょっと首をかしげるような部分もあり、また謎やもやもやが積み重なっていくような部分もある。
うわーー。それで4巻までで1つの物語になるんだ。それが「四重奏」なんだ。
3巻は、前二巻の過去にさかのぼり、ネッシムの母レイラと恋に落ちる若き外交官マウントオリーヴの物語になる。こちらは三人称で語られ、2巻では謎のままであったネッシムの過去や生い立ち、そして政治活動が明らかにされていく。この巻でさらに物語が深みを増してくるのだ。1巻ではなんの魅力もなく描かれていた人物が生き生きと動き出すようで、いやもうほんとに物語ってすごいなぁと思わせてくれる。

そして4巻。3巻まではずっと過去が語られてきたのだがここでようやく時が進む。「ぼく」(ダーリー)がネッシムに招かれてアレクサンドリアに戻っていくのである。いやもうここまで読んできて自分もダーリーとともにアレクサンドリアでの出来事をじっくり考え理解し克服した気持ちになっているので、ここでアレクサンドリアに戻るというのはなんというかほんとにたまらない気持ちになるのだ。

とにかく夢中になって読んだけれど理解しきれていないところも多々ある。登場人物が大演説をふるうような箇所が幾つもあって、そこに作者が言いたいことがこめられていたのかもしれないが、正直私には退屈に感じられたし、よくわからなくて軽く読み飛ばしてしまったところもある。
それでも現在、過去、未来という時間軸、それから語る人間の主観や理解でかわっていく視点と、物語がものすごく厚みがあって、仕掛けもたくさんあって、うねりがあって、これぞ長編小説の愉しみというような小説だった。素晴らしい。