りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

溺れる人魚たち

溺れる人魚たち

溺れる人魚たち

★★★★★

突然の死、性の目覚め、大人の不在…思春期の少女たちが出会うリアルな「息苦しさ」。アメリカ文学界の新星が贈る眩暈がするほど痛々しく、切ない9つのストーリイ

いんやーこれも面白かった。最近のアメリカの女性作家の短編にはずれなしって気がするなぁ。
原題は「How to breathe underwater」(水の中で呼吸する方法)それが「溺れる人魚たち」。題名といい、表紙のイラストといい、とても好みだなぁ。この間読んだ「空中スキップ」と同じくらい好きだ、これ。
どれも少女を主人公にした物語。
「溺れる人魚たち」というタイトルの作品は入っていないのだが、最もイメージが近いのは1つ目に入っている「イザベル・フィッシュ」だろう。
少女がいる。彼女は兄の恋人と一緒に溺れかけ、彼女が助かり恋人の方は死んだ。兄はそのことで妹を許せない。少女自身も自分を許せない。自分の方が死ねばよかったんだろうか。自分だけ生き残った意味はあるのだろうか。兄は一生自分のことを許してはくれないのだろうか。兄は私の方が死ねば良かったとおもっているのだろうか。少女の気持ちが実に痛ましく胸を刺す。

その他の作品でも、いじめにあっていたり、クスリをやめられなかったり、容姿に自信がなかったり、宗教的に孤立している少女たちが、もがき苦しみながら生きていく姿が描かれている。本来であれば、みなに羨ましがられ、もっと自由に生き生きと生きているように思える少女たちだけど、実際に少女時代を生きていくというのは、決してきれいでもなければ楽ちんでもない。ここに描かれている感情はきっと誰にでも覚えのあることではないかと思う。

痛い物語が多いけれど、後味は決して悪くない。作者の視線にあたたかさがあるからだと思う。