りつこの読書と落語メモ

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煙突掃除の少年

煙突掃除の少年 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

煙突掃除の少年 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

★★★★★

うわーーー。面白い!!バーバラ・ヴァイン!ルース・レンデルより好きだ。ミネット・ウォルターズより好きかもしれない。昔、バーバラ・ヴァインを読んだ時は、なんだかまどろっこしいなぁという印象を受けた。このじわじわくる感じにイラっときた。でも今はこのじわじわがものすごく魅力的に感じる。小説には読み時というものがあるのだなぁ、とつくづく思う。

小説家ジェラルド・キャンドレスは7月6日に71歳で永眠した。1926年5月10日生まれ―父の回想録の執筆をもちかけられたキャンドレスの娘サラは、自分が父の過去をほとんど知らないことに気づいた。さっそく調査に着手した彼女は出生証明書を頼りに父の親類らしき老女を突き止めるが…「ジェラルドはあたしの弟よ。五歳のとき髄膜炎で死んだわ」古びた死亡証明書を前に、愕然とするサラ。父は、ジェラルド・キャンドレスではなかったのだ。では、いったいどこの誰だったのか。不安を押し殺して調査を進める彼女が突き止める衝撃の事実とは。

娘2人を溺愛し、娘からも恋い慕われていた父親ジェラルド。著名な作家で子育てにも積極的に関わる彼はまさに理想の父親であった。しかし彼は妻アーシュラからすれば、アーシュラのことを最初から子どもを産む道具としてしか見ず、産んだらすぐに娘2人を彼女から奪い取り、家庭の中で孤立させ、彼女の人生を奪った非情な男だった。
ジェラルドの回想録の執筆をもちかけられた長女サラは、父の過去を調べるうちに、彼がある時から別の男になりかわっていたことを知る。いったいジェラルドにはどんな過去があったのか?
物語は、妻アーシュラと長女サラ2人の視点から語られる。

とにかくアーシュラがかわいそうでならなかった。なんという男なんだろう。後のほうになってジェラルドの隠し続けた過去と悲劇が明らかになっていくのだが、ジェラルドに対する嫌悪感は最後まで消えなかった。徹頭徹尾悪人なわけではないのだが、娘たちへの異常とも思えるほどの溺愛ぶりや、妻への冷酷さ、それがさまざまなエピソードから明らかになっていく。
例えばジェラルドと娘たちが客が来ると好んでする鋏のゲーム。相手を混乱させ侮蔑するためにだけ行っているようなこのゲーム。まるで自分がその場にいて仕掛けられたかのようないや〜な感じがする。娘たちがアーシュラのことを「ママ」と呼ばず、「マ」と呼ぶこと。成人してからもまだジェラルドの膝の上に乗る次女ホープ。こういう小さなエピソードでじわりじわりと読者をいや〜な気持ちにさせるのだな…。

しかし目が離せない。この徐々に霧が晴れるように、過去が暴かれていくのが、ばらまかれていたピースが徐々に一つの形を成していくのが、登場人物たちの気持ちが変化していくのが、もう面白くて面白くて目が離せなくなるのだ。
いやぁ〜じれったいけどこのじれったさがたまらないわ、バーバラ・ヴァイン。ラブ。