りつこの読書と落語メモ

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本泥棒

本泥棒

本泥棒

★★★★★

ああ、本当に良かった、これ。泣けて泣けてしょうがなかった。私は大好きだ、この物語。図書館で借りて(しかもかなり長いこと待って)読んだ本だけど、これは買おう。時々取り出して読みたい。宝物にしたい。そんな一冊だ。

ナチス政権下のドイツ。里子に出された孤独な少女リーゼルの密かな慰めは、本を盗むことだった。数奇な運命を辿る「本泥棒」の一生を、「死神」がナレーターとなって読者に語りかける異色の物語文学。

物語の語り手は死神。彼は言う。「わたしになんらかの取り柄があるとそたら、それはうまく気をそらせるところだ。そのおかげでなんとか正気を保っている」
死神だけど、なかなか優しい死神なのだ。そんな死神がポケットに大事にしまっておいた物語、それがこの物語なのである。

ナチス政権下のドイツで、少女リーゼルが里親のもとに預けられる。父親はどこかに行ってしまい、貧しい母親は少女と弟を育てていくことができない。しかも里親のもとに向かう汽車の中で弟は死んでしまう。ものすごい過酷な運命を背負って生きていく少女の話なのだが、しかしこの少女のたくましいこと!そして彼女を取り巻く人たちの魅力的なこと!口が悪くて料理も下手で年がら年中悪態をつくローザ、言葉少なく穏やかで頭の回転は遅いけれど高潔なハンス、リーゼルの親友になる隣の家の少年ルディ。

文字が読めなかったリーゼルに毎晩字を教えるハンス。リーゼルが文字を覚えていき、物語をもとめ、それを活力にして生きていく。ナチス政権と戦火の中、正気を保って生きていけたのは、物語の力にほかならない。
この物語の中にはさらに2つの物語が入っている。ユダヤ人の青年マックスが書いた「見下ろす人」と「言葉を揺する人(ワード・シェイカー)」だ。これがまたとても素晴らしい。
きっと作者は物語の力をリーゼルと同じように信じているんだろうなぁと思わせてくれる。本当にこの本を読めてよかった。