りつこの読書と落語メモ

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鏡の中を数える

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★★★★★

タイの若手人気作家プラープダー・ユンによる、待望の和訳短編小説集。一部タイファンの間では、かなり待ち焦がれられていた、ウワサの本です。
2002年、29歳にしてタイの最も権威ある文学賞である「東南アジア文学賞」を受賞した『存在のあり得た可能性』を含め、これまでタイで発表されてきた彼の人気短編集などの中から、日本でも受け容れやすい12編が選ばれ、東京外語大の宇戸清治教授の手により翻訳されました。短編の多くには実験的アイディアとタイ語の言葉遊びが散りばめられつつ、日本の日常にもそのままあてはまるほどリアルな現代へのクールな視点もみずみずしく光り、読む者に不思議な読後観をもたらします。
著名な父を持つがゆえに「親の七光り」と向き合わざるを得ない複雑な自我を描いた「バーラミー」や、手から紙片が滑り落ちてから、屈んでそれを拾うまでの間の長大な追憶「存在のあり得た可能性」など、その新鮮な構想力と、散弾銃のように続く濃密でピュアな言葉の連射は「文芸アート」とも言えるもの。最近のライトノベルブームとは一線を画す、東南アジアの文学の季節が送り出したニュータイプ文学として愉しんでいただけるでしょう。

タイの若手作家といえば、この間読んだ「観光」のラッタウット・ラープチャルーンサップ。いまタイが熱いのか?!これもセンスが良くてバラエティに富んだ短編集だった。

2人のプラープダー・ユンが出てくる「バーラミー」でハートを鷲づかみにされ、その次の「存在のあり得た可能性」で「おおお。これはすごい作家なのでは?!!」と本格感に驚き、「あゆみは独り言を言ったことがない」でその残酷さと虚無感に呆然となり、「重複する出来事」で煙に巻かれる。12作品収められていて、出来不出来に差があるような気もするけれど、人をくったような作品、言葉遊びのような軽い作品、虚無感に満ちた作品と、色とりどりでとても楽しい。
解説には「タイ化されたポストモダン文学」とあった。ふーん、って感じだ。(わかったようなわからないような)