りつこの読書と落語メモ

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本当の名前を捜しつづける彫刻の話

本当の名前を捜しつづける彫刻の話

本当の名前を捜しつづける彫刻の話

★★★

奇妙でせつなく、不思議にこわい6つの物語。新しい時代の傍観者・伊井直行、初の短編集。

なんとはなしに変な話を書く人だなぁ。伊井直行という人は。きちんとしたたたずまいで笑顔一つ見せずにまじめな顔で変なことを言うひと、というイメージだ。きっと陰の薄い生真面目な感じのする人なんじゃないだろうか。彼の書く小説は変な話が多いけれど、生真面目な感じが全体に漂っている気がするのだ。

短編というよりは中編の「海山寮の冬」が面白い。崩壊寸前の古い旅館、旅館で働く二人の老女、艶っぽい過去、そして幽霊。昔は「檀那さん」をめぐって死闘を繰り広げた2人。それが年をとって妙に仲良くなって、まるで少女同士のようにひそひそ内緒話。2人の老女っていうだけで怖いもんなぁ。だけど怖いだけじゃなくどこか笑える。
「本当の名前を捜しつづける彫刻の話」はまるで奇想コレクションのような…日本人が書いたんじゃないような作品。最後が妙にファンタジーっぽいのがまた面白い。

でも、私はこれより「愛と癒し」のほうが好みだったなー。