りつこの読書と落語メモ

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しゃべれどもしゃべれども

しゃべれどもしゃべれども (新潮文庫)

しゃべれどもしゃべれども (新潮文庫)

★★★★★

これ好き。好き好き大好き。こういう小説、ほんとに久しぶりに読んだ。そうなんだよ、こういう小説が読みたかったんだよ。うわーん。すごく良かった。良かった良かった好きだった好きだったと、何度も繰り返して言いたい。

しゃべりのプロだろ、教えてよ―あがり症が災いして仕事も覚束なくなった従弟の良や、気まぐれで口下手なために失恋ばかりしている美女の五月から頼られて、話し方教室を開くハメになった若い落語家の三つ葉。教室には苛めにあってる小学生や赤面症の野球解説者まで通ってきて…。嘘がつけない人たちの胸キュン恋愛小説。

半人前の落語家三つ葉のところに、どもりがひどくて仕事が立ち行かなくなった従兄弟の良が「話し方教室を開いてくれ」と頼みに来る。さらに、美人だけど人付き合いがうまくできなくて失恋の痛手から立ち直れていない女、関西から引っ越してきていじめにあっている少年、あがり症の野球解説者、と一癖も二癖もある人たちが三つ葉のもとに集まってきて、なぜか彼らに落語を教えてることになる。
頑固で単純でお人よしの三つ葉は、自分の落語もまだまだ覚束なく、人に教えている場合ではないのに、彼らと関わってあれこれおせっかいをやいては自己嫌悪に陥り、しかしそこから自分が気付くこともあり、変わり者ばかりでケンカばかりだった彼らの間にも友情のようなものが芽生え…。

とにかく主人公の三つ葉がいい。読みながら何度「ああ、好きだ!」とつぶやいたことだろう。いい奴だ。ほんとにいい奴。そして彼のもとに集まる人たちがみんないい。真ん中にいるのがいい奴だと、ひねくれた奴も世を拗ねたような奴も何故か一緒に明るい方向を見られるようになるんだよなぁ。

タイトルがいいなぁ。しゃべらないと伝わらないこともある。うまくしゃべれないばかりにうまくいかないことも多い。だけどしゃべってもしゃべってもまだ足りない。でもうまくしゃべれなかったけれど、伝わったように感じる時もある。うまくいかないときもある。そういう全てを肯定しているような感じがする。

ストーリーは単純で、語り口は軽快で、実に読みやすい。自分に自信をもつことや、人と人との関係や、仕事の関わり方や、そういうあれこれを、人一倍うまくやれていない人たちを描きながら、どこかおかしくてあたたかい。すごく笑えて泣けて、心にしんと響くところがあって…。ああ、すごく好きだ。好きだとしか言いようがない。初めて読んだ佐藤多佳子。他の作品も読んでみよう!