りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

アナンシの血脈

アナンシの血脈〈上〉

アナンシの血脈〈上〉

アナンシの血脈〈下〉

アナンシの血脈〈下〉

★★★★

何をやっても冴えないチャーリーは、父親の葬儀の日に衝撃の事実を告げられる。「あんたの父さんは神だったからね―」そしてある日、神の血を色濃く受け継ぐ、スパイダーという名のきょうだいが現れて、平凡だったチャーリーの人生は音を立てて崩れはじめた。アフリカ神話の神の血脈に連なる二人の青年。その正反対の生き方がぶつかって巻き起こるとんでもない事件とは…?!ありえない現実と真に迫る幻想が交錯する、ジェットコースター・ストーリー。

アナンシというのはアフリカ神話に出てくるクモ。いたずら好きで遊び好きで時々残酷ででもユーモアに満ちたアナンシは、この世でもあの世でも「人騒がせ」ではた迷惑な存在。そんなアナンシを父に持ったチャーリーだが、仕事はしょっちゅうクビになるし、まわりの人からも常に軽く扱われ、神とはほど遠いとほほな人生を送っている。父親の神の血を受け継いだのがスパイダーで、チャーリーとは対照的に周りの人たちを魅了し女にもてまくり好き勝手な人生を送っている。父の葬式で自分にはきょうだいがいると知らされてチャーリーはふとした出来心からスパイダーに連絡をとってしまい、現れたスパイダーに人生をめちゃくちゃにされる。職場は追われるわ、家は占領されるわ、婚約者ロージーまで奪われて…。

とにかくストーリーの面白さでぐいぐい読ませる。もう少し深遠な小説なのかと思ったけれど、とびきり面白い映画を見ているような、ページをめくらずにいられないマンガを読んでいるような、読みやすくてとにかくひたすら楽しい小説だった。面白かった〜。これは映画にしても面白いと思うな。

以下はネタバレです。





  • だいたいこういうふうになるのかなと思ったとおりの展開だったけれど、がっかり〜ってことはなくて、期待にこたえてくれてありがとう、って感じ。
  • 印象的な場面がいくつもあって、だからこそこれは映像向きだと思ったんだけど。たとえば、病院にアナンシが妻を見舞いに音楽隊を引き連れてやってくるシーン。チャーリーが初めてスパイダーと出会うシーン。チャーリーがスパイダーとロージーの寄り添うシルエットを目撃しまうシーン。アナンシとの再会のシーン。そしてトラや鳥やハイエナが出てくる寓話的なシーン。ぱっと印象的なシーンを見せておいて、最後に物語がうまいぐあいに繋がってそれらのシーンが効果的に思い出させられるところなんか、とてもうまいなーと思った。
  • 現実と非現実のシンクロのさせ方がとてもうまいのだ。特に後半部分は全部がつながっていく感じで面白かった。