りつこの読書と落語メモ

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驚異の発明家の形見函

驚異の発明家(エンヂニア)の形見函 (海外文学セレクション)

驚異の発明家(エンヂニア)の形見函 (海外文学セレクション)

★★★★★

1983年、パリの骨董品オークションで手に入れた、がらくたの詰まった函。それは産業革命以前のフランスで、自動人形の開発に心血をそそいだ天才発明家の「形見函」だった。10の仕切りのなかには、それぞれ、広口壜、鸚鵡貝、編笠茸、木偶人形、金言、胸赤鶸、時計、鈴、釦、そして最後のひとつは空のまま。フランス革命前夜、のちに発明家となる少年クロード・パージュの指が、ジュネーヴの外科医によって“故意”に切り落とされる事件が起こる。ここに端を発する彼の波瀾万丈の生涯について、形見函におさめられた10の想い出の品は、黙したまま雄弁と語りはじめるのだ―。18世紀という好奇心にみちた時代を鮮やかに再現し、世界の批評家たちを唸らせた驚異のデビュー作。

語り手がオークションで年代物の函を手に入れる。手に入れてすぐにあるイタリア人が近寄ってきてそれを譲ってくれと言ってくる。この函は「ある人間の一生を記録に留めた死の象徴(メメント・モリ)」だという。しかも彼が入手した形見函はクロード・パージュという産業革命以前の天才発明家のものらしい。

まずこの物語の構成自体にヤラれる。その人の人生そのものを象徴するものを収めるという形見函。この形見函の中に収められたそれぞれの物たち(瓶、貝、人形など)がそれぞれ物語の章になり、天才発明家クロードの人生が語られるという構成。
形見函という物自体がフィクションなの?それともそれは本当にあるものなの?この天才発明家クロードはいったい何の発明をした人なのか?どういう人なのか?序章を読んだらもう心を鷲づかみにされ、物語の中にどっぷり引きづりこまれていた。
奇想天外な設定、緻密なストーリー展開、これでもかこれでもかと細かい描写、どこまで本当でどこまでがフィクションかわからない説得力のある語り口。期待通りのこってりしたフィクション!ああ。こういう小説にめっぽう弱いよ…。

刺激的なストーリーもさることながら、この発明家クロードが、決してエキセントリックなだけの天才として描かれているのではないところがとてもいい。探究心や向上心が旺盛で決して不遜になりすぎない。天才というのは正しい方向に努力ができる人間なのだなぁと思える、とても魅力的な少年なのだ。
クロードと尊師、パリに行ってから出会う御者、三文文士のプルモー、剥製師のピエロとの関係もとてもいい。お互いを尊重しあってきちんと友情を育み、助け合い赦しあっていく。そういう面ではしごくまっとうなのだ。クロードという少年の成長物語でもあるのだ。

次回作もぜひ読んでみたい。