りつこの読書と落語メモ

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記憶の書

記憶の書

記憶の書

★★★★

壮大な第三部作の2作目ということで、「白い果実」の記憶が失われないうちにと読んだのであった。

理想形都市”崩壊の八年後、独裁者ビロウの策略で、クレイたちのコミュニティーに奇妙な“眠り病”が蔓延した。シティの廃墟に戻ったクレイは、独裁者自身も同じ病いに冒されていることを知る。特効薬の手がかりを探しに、崩壊が始まっているビロウの“記憶の宮殿”に潜入したクレイは、銀色に輝く“水銀の海”の空中に浮かぶ島で、不可思議な四人の人物に出会うが…。

理想形都市から逃れた人々が谷間に創設した小さな村で、クレイは病人に薬草を処方したり出産を助けたりして村人とともに平和に暮らしていたのだが、そこへ金属製の鳥が飛んできて爆発しそのガスを吸った村人たちは眠り病に冒されてしまう。マスター・ビロウの復活を確信したクレイは村人を救うため、市の廃墟へ1人で向かう。そこで彼を待ちうけていたのは、人狼の群れと、ビロウの息子を名乗る魔物だった…。

どんな話に転がるかわからなかった「白い果実」に比べると、こちらは最初から「白い果実」の後半のトーンがそのまま続いていてとてもわかりやすくて読みやすい。また前作では邪悪の権化のような存在であったビロウだが、クレイ自身が彼の記憶の中に入っていくことで、たんなる「化け物」ではないビロウが見えてきて、これもまた面白かった。クレイの記憶の中に入って出会う人たちも魅力的で、今回は善悪がはっきり分かれている分、安心して(いや実際はきっと何かつらいことが起こるのでは…とハラハラしながら)読んだ。前作が「動」で、この作品は「静」という感じだ。

ただわかりやすい分、「白い果実」にあったあの底知れない恐ろしさやねじくれた感じがなかったかなー。「記憶の書」自体の意味も少し薄かったような気がしないでもない。訳も山尾悠子さんじゃなくなっちゃったんだねぇ…。ちょっと残念だけれど、でも山尾訳を待っていたらきっと10年後とかになっちゃってたのかもなぁという気もするし。
とにかく「すごいすごい」と評判の(もっぱらあとがきで)三作目が読みたい!