りつこの読書と落語メモ

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アイの物語

アイの物語

アイの物語

★★★★★

この本をなんで読んでみようと思ったかというと、amazonくんに薦められたからである。「この本を読んだ人はこんなのも読んでます」とか「リストマニア」とか、amazonくんにはほんとにいつもヤラれっぱなしだ。いやまあどんどんお薦めされたくて、どんどん自分で分け入ってるわけなんだけど。

『神は沈黙せず』の著者がつむぐ“機械とヒトの千夜一夜物語”。
数百年後の未来、機械に支配された地上で出会ったひとりの青年と美しきアンドロイド。機械を憎む青年にアンドロイドが囁く、「物語から、この美しい世界は生まれたのよ」と。彼女が語り始めた、世界の本当の姿とは?

舞台は数世紀後の地球。ヒトは数が少なくなりコロニーの中で暮らし、その代わりに人口のほとんどを占めているのはマシンたちだ。コロニーの長老たちからマシンに捕らえられたら酷い目にあわさせると聞かされて育った子どもたちは、マシンを恐れ憎み彼らの食べ物を強奪して命をつないでいる。
「語り部」と呼ばれる青年もそんな風にして育った1人。彼がある日、少女型のアンドロイド・アイビスに出会い、彼女から「話をしたい」と声をかけられる。アイビスを信じられない彼は戦いを挑みあっさり負け、マシンたちの収容所に連れて行かれる。
アンドロイドたちに対する反感をあらわにする「語り部」にアイビスは自分の語る物語を聞いてほしいと言う。それは21世紀にヒトによって書かれたフィクションなのだと。アンドロイドに洗脳されるのではないかとおびえながらも、「語り部」はアイビスの物語を聞くことを承諾する…。

物語は、アイビスと語り部の物語(インターミッション)とアイビスが語る7つの物語から構成されている。
アイビスの目的は何なのか?どういう結末が待っているのか?という大きなモチーフがあるが、物語の大半を占めるのはアイビスが語る「ヒトが創った」という物語。これが本当に面白い。最初は「軽いジャブ」のような話で始まり、徐々にアイビスが伝えたいことが伝わってくるような話へと進んでいく。

私が一番ぐっときたのは6番目の「詩音が来た日」。ああ、これはほんとに良かった…。こんな物語を書く人にはもう一生ついていこうと思ったよ…。アンドロイドは確かに人間の心はわからない。そしてアンドロイドから見れば人間は間違いを犯すことの多い欠陥だらけの存在だ。けれど詩音はそんな人間を軽蔑するわけでもなく蔑むわけでもなく受け入れ学んでいく。アンドロイドと人間で相容れないところはあるけれど、お互いのものさしでちょっとずれながらも確かに魂が触れ合った瞬間があったのだ。それが私を泣かせる…。おろかな人間のおろかな理解にしかすぎないけれど、それでもおろかなりに感じて理解して共存していけるかもしれない。
この「詩音が来た日」によって、物語も最終章へ向かってこれで一気に加速する。

そして最終章「アイの物語」。今まで語ってきた6つの物語は全てフィクションだが、これは自分についての真実の話だと言うアイビス。このアイの物語を理解するための鍵が「詩音が来た日」だったのだなと読んでいるとわかるのだ。ああ…物語の力っていうのは本当にすごい。それを「語り部」と一緒に6つの物語を聞いてきた読者も体感することになるのだ。

「フィクションであっても、現実の歴史より正しい」
アイビスが何度も語るこの言葉。物語には確かにすごい力があるのだ。尊いものなのだ。そう思ったら涙が出てきた…。すごくいい小説だった。こんな物語をありがとう。そしてamazonくんもありがとう。