ドリアン・グレイの肖像
- 作者: ワイルド,仁木めぐみ
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2006/12/07
- メディア: 文庫
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こちらは「カラマーゾフの兄弟」と同じく光文社の古典新訳文庫より。光文社のサイトで見た時から気になっていて是非読んでみたいと思っていた作品。
いやぁ…古典って強烈だなぁ。いろんな意味で強烈だ。まずこんな物語が1890年に書かれたということに驚くし、これが「名作」と呼ばれることにも驚く。名作というのは決して「正しく生きた人」のことを書いた物語を指すわけではないのだなぁ…。正しくなくても「人間」が描かれていればそれは「名作」と呼ばれるのだろうか?「名作」の定義ってなんなんだろうか?
美貌の青年ドリアンと彼に魅了される画家バジル。そしてドリアンを自分の色に染めようとする快楽主義者のヘンリー卿。卿に感化され、快楽に耽り堕落していくドリアンは、その肖像画だけが醜く変貌し、本人は美貌と若さを失うことはなかったが…。
明らかにここに出てくるドリアン・グレイ、グレイの肖像を描いた画家のバジル、グレイを自らの快楽主義の色に染めるヘンリー卿の3人は、男同士の恋愛関係にある。この時代それを書くことは罪であり、だからあからさまな表現はされていないのだが、しかしそのことは読めばわかる。いやはやこれは…。
そしてこの物語の強烈さはそのことだけではないのだ。グレイの堕落ぶりがハンパではないのだ。ここまで徹底して堕落を描いたのはすごいと思う。今この小説が発表されてもかなりセンセーショナルだ。それがしかも1890年に発表されたというのだから…。
そして物語の強烈さもそうだが、それがあっけらかんと描かれていることに驚いてしまう。これは文体のせいなのだろうか?古さがないとは言えない。しかし今読んでも十分驚き楽しめる小説だ。