りつこの読書と落語メモ

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西の魔女が死んだ

西の魔女が死んだ (新潮文庫)

西の魔女が死んだ (新潮文庫)

★★★★★

ああ、とても良かった…。評判は聞いていてきっといいんだろうなぁとは思っていて、先に読んだ長女も「すごくよかった。ママもきっと好きだと思う」と言っていたので、とても読むのを楽しみにしていた本。評判どおりの、というより思っていた以上に好きな作品だった。

中学に進んでまもなく、どうしても学校へ足が向かなくなった少女まいは、季節が初夏へと移り変るひと月あまりを、西の魔女のもとで過した。西の魔女ことママのママ、つまり大好きなおばあちゃんから、まいは魔女の手ほどきを受けるのだが、魔女修行の肝心かなめは、何でも自分で決める、ということだった。喜びも希望も、もちろん幸せも…。その後のまいの物語「渡りの一日」併録。

西の魔女とは主人公まいのママのママのこと。イギリス人のおばあちゃんは山奥に1人で暮らしている。学校に行くことができなくなったまいは、ひと月おばあちゃんの家で暮らすことになる。おばあちゃんは「魔女の手ほどき」をまいに施していく。魔女になるために一番大事なことは「何でも自分で決める」ということ。おばあちゃんはささやかな日常を大切に過ごすことや死について穏やかにまいに教えてくれるのだ。

まいの潔癖さと偏狭さがとても少女らしくて胸が詰まる。「正しくあろう」とすることのつらさ。人の悪意や鈍さに過敏に反応してしまうこと。好きな人と好きな物にだけ囲まれていれば穏やかでいられるのに。その気持ちは痛いほどわかる。
そしてつまらない意地をはったことを悔やんでも悔やみきれない気持ち。
それがあのラストで…ああ、おばあちゃんはやっぱり魔女だったんだなぁと、ちゃんと約束を覚えていてくれたんだなぁちゃんとわかっていてくれたんだなぁと…。

私はこの作者のことはほとんど知らないのだが(この間「エンジェルエンジェルエンジェル」を読んだくらい)、なんというかとても「正しいこと」をしようという志を持っている作家のように思える。押し付けがましくもなければ、声高に叫んでいるのでもないけれど、宗教を持たない私たちが何を信じてどういう風に生きていけばいいのか。何を大事にしたらいいのか。本気で考え、小さな人たちに訴えているような気がした。