りつこの読書と落語メモ

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死を忘れるな

死を忘れるな

死を忘れるな

★★★★★

読み始めて気がついた。がーん…これ前に読んだことある本だった。どうせ忘れてたんだから再読したってもちろんいいんだけど、ミュリエルスパークはまだ読んでない作品の方が多く次々読んでいくぞーと思っていたから、なんかちょっと損したような…。それに「老い先短い」ってわけじゃないけれど、まだまだ自分が読んでいない面白い本がたくさんあってそれを読みきることはできないんだなーと思うと、もっともっともっと読みたい!という気持ちにかられてしまうんだなぁ…。
いやでもこれは半分ぐらい読んで気がついた。多分私これ前に読んだ時挫折してるわ…。だって後半のストーリーにはまったく覚えがなかったもの。図書館で借りて返却日が来て泣く泣く返したんだな、きっと…。だから良かったのだ。自分の鳥頭のおかげでこうして読むことができたのだから。この素晴らしい小説を。

いやもうほんとにスパークは変な話を書く人だよなぁ。意地が悪くておかしくて笑えてちょっとぞっとする。スパークの小説にはほんとにスパークにしか出せない独特の味がある。スピード感(のなさ)、静けさ、生真面目さ、滑稽さ、道徳心(のなさ)…何をとっても「独自」としか言いようがないんだよなぁ。

夜毎の電話があなたの耳にささやく。「死をわすれるな(メメント・モリ)」、と。
怪電話をきっかけに老人たちの間にまき起こる騒ぎをユーモラスに、そしてサスペンスフルに描くイギリス小説の傑作。

レティという80歳近い女性のところに、知らない男から夜毎、「「死ぬ運命を忘れるな」と言うだけの電話がかかってくる。レティは昔刑務所に勤めて勲功章を受けたというタフな女性なのだが、この電話にはかなり参っていて、87歳の兄ゴトフリーに相談したり引退したモティーマ警部に調査を依頼したりするのだが、そのうちこの電話が彼らの元にもかかってくるようになり…。

とにかく出てくるのは全て老人。レティもゴトフリーもその妻で著名な作家のチャーミアンも、ゴトフリーの家の元家政婦で今は入院しているジーン・テイラーも、新しくやってきた腹黒い家政婦のペティグルーも…とにかく出てくる人のほとんどが老人。耄碌してたり健康を害していたり常に遺言状を書きかえていたり、まだちょっと色気が残っていたり、昔はあの人とこの人が愛人関係にあったり、時には誰かが死んでしまったり。

老いたからと言って何かを達成できるわけではないし達観できるわけでもない。プライドは捨てられないし隠し通したい秘密はあるし虚栄心もあるし好奇心もある。だけど身体や頭はどんどん衰えてくるし、1人でできることは少なくなってくるし、自尊心は傷つけられるし、友人や頼りにしていた人たちも死んでいく。そんな中でじたばたと死ぬまで生きていく老人たちを、スパークは時に意地悪に、しかしおおむねユーモアを持ったあたたかい目で見ているような気がする。

とにかくこの「変さ」「おかしさ」は読んでみなければわからない。スパークの作品がほとんど絶版になってしまっているというのはほんとに悲しいことだなぁ…。