りつこの読書と落語メモ

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第四の手

第四の手

第四の手

★★★★

TVジャーナリスト、パトリックは、インドでサーカスの取材中、ライオンに左手を喰いちぎられる。以来、なんども夢に現われる、深緑の湖と謎の女―。やがて事故死した男の手が移植されることになるが、手術を目前に「手」の未亡人に子作りを迫られ、月満ちて男の子が誕生する…。稀代の女ったらしが真実の愛に目覚めるまでのいただけない行状と葛藤を描く、巨匠による最新長篇。

取材中ライオンに左手を喰いちぎられ、その様子を全国中継で流されて、「ライオン男」と呼ばれるようになったパトリック。ハンサムで人当たりが良くて中身がからっぽで、女から誘われると断れない。断れないから次々適当なことを言って次々女と関係を持つ。
そのパトリックが無くなった左手を移植することになる。移植の提供を申し出たのはピストル事故で夫を亡くしたクラウセン夫人。クラウセン夫人は夫の左手を提供するかわりに、左手と定期的に面会することを約束させる…。

相変わらず荒唐無稽でグロでどこに向かうかわからないようなストーリー展開なのだが、読んでいるうちにどんどん面白くなってきて物語の中に巻き込まれていって夢中にさせてくれる。やっぱりアーヴィングはすごいなぁ…。

出てくる女性がみんなものすごく個性的で魅力的だ。決して美しくはない女性もそれぞれに味があって魅力があって強さがあって、やっぱりアーヴィングの描く女性はいいなぁ、としみじみ思った。
ミステリアスでセクシーなクラウセン夫人はまさにパトリックが「インドの鎮痛剤」の副作用で見た夢に出てくる「幻の女」そのものだけど、それ以外の脇を固める女性がみな実にいい。
パトリックが日本に取材に来た時に出会うイヴリンは、「白髪まじりのショートヘアが実用本位のヘルメットのように顔にかぶさっている」というずんぐり丈夫な女性なのだが、「不覚だわ、あなたに惹きつけられたなんて」などとかわいいことを言ったりするかと思えば、「あなた、自分の人生を変えようとする勇気はある?」と切りつけてくる。
同じテレビ局で働くメアリは「子どもを産ませてくれ」とパトリックに迫りながら、アンカーの座も虎視眈々と狙っている。その破壊的とも言えるほどの上昇志向は、あるいみあっぱれだ。
ガムばかり噛んでいるメークアップアーティストのアンジーは低俗だけど聖母のような優しさがある。

この物語は実はパトリックの成長物語なのだ。さまざまな女と意味のない(ように見える)情事を繰り返しながらも、女たちからいろいろなことを教えてもらい、そして愛するということを知り、自分自身と向き合うようになっていくのだ。

なんで第四の手なんだろう?と2/3ぐらい読んだところで疑問に思ったんだけど、この謎が明らかになるところが、うーん…実にいいんだ。ほれぼれ。
この小説をアーヴィングのベスト1に挙げる人はそれほどいないかもしれないけれど、それでもやはり面白い味のある小説だった。私は好きだ。