りつこの読書と落語メモ

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空中スキップ

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★★★★★

面白い長編にあたるより、面白い短編にあたる確率の方が圧倒的に高いと思う。ここ数年、短編のレベルが上がった?それとも私が短編の面白さに気づいただけなんだろうか。
ぴりっと辛口でちょっと摩訶不思議で胸がちくっと痛くなって読み終わってにやりとする。そんな短編はかなりたくさん読んできたから、ちょっとやそっとじゃ感動しないぞ!という気持ちが私にはある。(←なんかえらそう←でも全然えらくはないです、はい。)

この本はいろんな人が絶賛していたので、期待をもって図書館で予約して、ようやくまわってきた一冊。タイトルといい、表紙といい、なんだかとっても私好みな予感がしていた。

“バドニッツ”体験後には、世界はちょっとちがってみえる。「いま」「ある」「ここ」に居心地の悪さを感じているあなたを解放する、おかしく、せつなく、退屈しらずの23の物語を収録。


いやいやこれがもう…期待に違わぬ、いや期待以上のすばらしさだった。解説に

この本を読むということは、たとえばラジオのつまみを回して飛び込んでくるいろいろな周波数の電波に耳を傾けるような、見知らぬ遊園地の乗り物に次から次へと乗せられるような、そんな体験に似ている。

とあるけれど、まさにそうだ。1つ1つの短編がどれも違っていてどれも面白い。そしてどれも小手先だけじゃないユーモアと凄みがあるのだ。なんなんだ、この本格感は…?
毒もあるけど毒だけじゃない。読んでいてわくわくしてくるような想像力の豊かさがあるのだ。そしてちゃんと向かう方向がしっかりしている。きちんとおさまっている。これはすごい。
なんていうか最近面白い短編が増えたけれど、どっちに転んだかわからないような作品も多いじゃないですか。なんとなく投げっぱなしにされちゃった、みたいな。
これはそうじゃないの。うまく言えないけど、物語がきちんとしているの。ちゃんとしてる。必然性がある。そこがとっても稀有だと思った。すごーーく好きだった!

そしてタイトル。原題はFlying Leap。飛びながら跳ぶ。で、空中スキップ。ああ、うまい…なんてうまいタイトルなんだ。カンゲキ。
このタイトルずばりの物語は入ってないのだが、この短編集の中には確かに「飛ぶ」ことを描いた作品が幾つかある。私自身、飛ぶ夢をよく見るし(飛ぶというよりは「跳ぶ」かもしれない)、飛ぶことに関しては結構思いいれというかイメージを持っているので、そういう意味でもこの短編集はなんか自分にぴたっとフィットする感じがした。

おさめられている23話、どれをとっても好きなんだけど。特に好きだったのは、「秋冬ファッション・カタログより」「イェルヴィル」「アベレージ・ジョー」「飛ぶ」「本当のこと」「バカンス」「スキンケア」「電車」「ブルーノ」「ハーシェル」。不気味だったりダークだったりしながらも醜悪にならず、あたたかい後味もあって、どれも秀逸だ。

作者は1973年生まれだって…。ためいき…。